ここ最近は日本政府のスタートアップに対するバックアップも相まって起業する人が増加しています。
シンガポールなどの海外で起業する人も一部いますが、ほとんどの起業家は金銭的な問題やライフスタイルの関係で海外での起業は最初から選択肢に無く、日本での起業を考えています。
結論を言うと起業のメリットは沢山あります。
今回は今現在起業を考えているあなたに対して、フラットな目線から起業することのメリット・デメリットをお伝えします。
1:起業の5つメリット
かつては「ハイリスク・ハイリターン」とも呼ばれましたが、メリット・デメリットを比較してみると、ハードルはそこまで高くありません。
数あるメリットの中でも5つの大きなメリットを挙げていきます。
1-1 自分のやりたいことができる
起業を志す方の多くが、最初のきっかけとして思うことだと思います。
会社勤めをしていると、誰しもが一度や二度は「今の仕事(会社)が自分に向いていない(合わない)」と思うことがあるでしょう。
部署或いは異動による配置転換により、自分のやりたい仕事や適性に合う仕事に就ける可能性もありますが、会社や組織に属している以上、大なり小なりのしがらみはどこに行ってもあります。
時には、やりたくない(向いていない)仕事も引き受けなければなりません。
ある程度の我慢や辛抱は必要だと思いますが、そうしたしがらみを「向いていない」と感じるのであれば、逆に自分のやりたいことで起業した方が、はるかにパフォーマンスを発揮できるかもしれませんね。
1-2 組織や上司に束縛されない
今も昔も「同僚」「先輩・後輩」「上司と部下」それぞれの関係性の良否が、仕事の成果や良し悪しを決めると言っても過言ではありません。
関係が良好であれば何事も比較的スムーズに進み成果も出やすいですが、そうでない場合は何かと気を遣ったりタイミングを見計らったりと、簡単なこともスムーズにいきません。
また、会社や組織が大きくなればなるほど、様々な決まりやルールが設けられ、時として色んな制約が課されます。
組織に属していると、自分のやるべきこと以外にも様々気を遣わなければいけないため、煩わしさを感じることも多いでしょう。
その点起業は、自分のやりたいことややるべきことに集中して取り組めるため、ストレスを感じる場面は少なくなります。
1-3 定年がなくいつまでも働ける
かつては、その会社に定年まで勤め上げれば、年々それなりの地位(役職)や給料が保証されていましたし、定年後も老後の生活に困らぬ退職金が支給されていました。
しかし、長引く不況の影響に伴い、年功序列、終身雇用制度が崩壊し、企業もかつてほどの余裕がなくなっています。
そして一生安泰とまで言われていた大企業ですら、早期退職の推奨やリストラなどが敢行されています。
我々にとってももはや対岸の火事ではありません。現行制度では老後の年金はあてにできないと言われており、満足に退職金も支給されなければ、定年後も引き続き働き続けなければなりません。
しかし、定年後も働き続けるのは、より困難を極めます。
少なくとも、よほどの能力やスキル、人脈等が無ければ、継続していくのは難しいのではないでしょうか。
その点起業は、言うなれば「手に職」を付けた状態であり、長年の信頼と実績が伴っていれば、定年を気にすることなく働き続けることができます。
1-4 自分が退いても事業の継承ができる
何らかの理由で第一線から引くとしても、事業継承がスムーズにいけば、その後は安心して悠々自適の生活を送ることができます。
優良な顧客やノウハウが蓄積された事業であれば、事業そのものの価値が大きく認められ、買い手も付きやすいでしょう。
1-5 実力次第でいくらでも稼ぐことができる
会社勤めの方の多くは、毎月決まった給料と残業代、そして業績によってボーナスが支給されます。
業績や成績が良ければ、やがて地位(役職)は上がり、昇給もありますが、毎月支給される給料は、基本的には「一定額」です。
起業した場合は、時期によって変動の波はあるかもしれませんが、言うなれば「やればやっただけ」「がんばったら頑張った分だけ」手元にお金が舞い込んできます。
業績が安定するまで困難はありますが、会社勤めと比べると高いモチベーションで仕事に取り組めるのではないでしょうか。
2:起業の3つのデメリット
起業のメリットがあれば反面デメリットも存在するのですが、メリットに比べて少ないです。
そんなデメリットを見ていきましょう。
2-1 社会的信用を得るまでローンなどが組めない事がある
住宅や自動車、カードローンなど高額になると、審査の際に勤務先や年収、支払先や支払い状況などがチェックされます。
起業間もないタイミングや、事業開始してまだ数年程度だと、月々の収入もまだ不安定な段階ではないでしょうか。
金融機関としても、収入が不安定な状態だと、将来にわたって支払を続けていけるのかと懸念を示すため、金額や内容によっては、審査が通らない(融資が受けられない)可能性があります。
2-2 失敗は全て自己責任
会社勤めであれば、仮に自分が仕事上で失敗やミスをしたとしても、周りが救いの手を差し伸べてくれたり、組織でカバーする仕組みが出来上がっていれば、それ以上の損害・損失を防ぐことができます。
しかし起業の場合は、基本的に「自己責任」です。
ミスや失敗をしたとしても、基本的には自分で解決せねばならず、それに伴う損害や損失も、自分の手でカバーしなければなりません。
何をするにしても「自分で考え、自ら行動しなければならない」のです。
2-3 制度を設立しないと退職金などがもらえない
法人であれば、その会社に勤務する全ての人に退職金の支給が認められています。
しかし個人事業主の場合、そもそも退職金の支給が認められていません。
そのため、老後や引退後の生活資金を少しでも確保したいのであれば、「小規模企業共済」に加入することをおススメします。
3:海外ではなく日本で起業する3大メリット
記事の冒頭で少し触れたように経済成長が鈍化している日本ではなく、海外で起業するという方法もあるようですが、はたしてうまくいくでしょうか。
私は日本での起業の方がやはり日本人には向いていると考えます。
その理由を説明していきます。
3-1 ビザなどの問題も関係ない
海外で起業する場合、基本的にはどの国でもビザの発給が不可欠です。
一定の語学力があり、現地の法律や制度、商慣習などが理解できれば、海外起業のハードルは低いかもしれません。
しかし全く初めての起業であったり全くの素人であれば、まずはそういったしがらみの無い国内で起業して実績を積んでからでもよいのではないでしょうか。
3-2 ルールや細かい法律などを把握している
自分の全く知らないところで事業に関する許可を申請していなかったり、ちょっとした法に触れていたなんていう事もよく聞きます。
そんなときも国内であればすぐに解決できますので、やはり日本で起業することのメリットになります。
また起業時の資金調達に関してもそうです。
日本国内での起業であれば、日本政策金融公庫の創業融資や各種助成金・補助金などが利用できます。
その他、助成金や補助金も含めて日本にいるからこそ支給される給付金は沢山あるので、それらを活用できるのも国内で起業する強みです。
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3-3 GDP世界3位の日本は国内で十分な市場がある
GDPとは国内総生産のことを指し、簡単に言うと1人あたりのGDPが高ければ高いほど所得も高くなる事になります。
内閣府が2022年12月に発表した日本の名目GDPは、アメリカ、中国に次ぐ3位でした。
2022年 世界GDPランキング
順位 | 国名 | 単位(百万US$) |
1位 | アメリカ | 25,346,805 |
2位 | 中国 | 19,911,593 |
3位 | 日本 | 4,912,147 |
4位 | ドイツ | 4,256,540 |
5位 | インド | 3,534,743 |
しかし、アメリカと中国には大きく水をあけられており、4位ドイツには今年中に抜かれる可能性もあるとのことで、決して安泰とは言えません。
政府は今後5年間で国を上げて起業に力を入れる体制作りを表明しています。
成熟した国内市場においても、いわゆる「隙間産業(ニッチ市場)」はまだまだありますし、早いタイミングでニッチ市場に進出しシェアを独占できれば、一獲千金も夢ではありません。
4:起業後にしてかかる税金問題について解説
起業後は会社勤めと違い、各種税金の扱いを自身で行わなければなりません。
そこで最低限の知識についても知っておく必要があります。
4-1 会社員時代はある程度会社がやってくれていた
会社員は、毎月の給料から所得税が引かれ、年末に行われる「年末調整」によって、給与所得に対する所得税を確定し、納めています。
大概は企業の総務や経理、人事労務担当者が行っており、個々人は指定された書類を記入あるいは提出するのみで、記入並びに提出をするにあたって特段の知識は必要ありません。
4-2 個人事業主にかかる税金
主に所得税、消費税、住民税、個人事業税が挙げられます。
■所得税
毎年1月1日から12月31日までの間に得た収入から経費を引いた「所得」に対して課される国税です。
累進課税となっているため、所得が増えれば増えるほど税率も高くなります。
■消費税
商品やサービスの消費に対して課される税金で、受け取った消費税分から、自身の仕入や経費で支払った差額を翌年の3月31日までに申告・納税します。
但し、個人事業主には事業者免税点制度が設けられており、前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば、その期間においては消費税の納税が免除されています。
■個人事業税
法で定められた業種の事業を行っている場合に課税される税金です。
事業税のかかる業種は都道府県ごとに決められており、事業や地域によって税率が異なるようです。
確定申告書を提出すれば、個人事業税についても申告したと見なされるため、改めて申告する必要はありません。
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4-3 法人にかかる税金
上述の消費税の他、法人税、法人事業税が挙げられます。
■法人税
個人でいうところの所得税にあたり、法人の所得に対して課せられる税金です。
法人の種類や資本金額、年間所得金額によって税率が変動します。
■法人事業税
事業所等を有する都道府県で事業を営んでいることに対する税金です。
4-4 法人の方が個人事業主よりも得
一番の理由は、節税対策です。
例えば個人事業主の場合は、法人と比べて必要経費として認められる幅が狭いことがデメリットです。
また、所得税が累進課税方式を採っているため、所得が上がるにつれて税率も上がるうえ、高所得の場合だと、その半分近くが税金として徴収されてしまうことがあります。
一方で法人の場合は、自身の役員報酬を経費として計上できたり、役員の退職金を損金として計上できるため、法人所得を減らす(節税)ことができます。
関連記事:起業2年目に大事な分かれ道!税金・資金調達はこれで決まり!
5:ベンチャー企業が増えた理由
ここ数年でベンチャー企業が増えつつあります。
その気になる理由を探ってみました。
5-1 日本政府が起業やベンチャー支援に積極的
昨年、岸田首相は過去最大規模となる1兆円の予算を閣議決定。11月には「スタートアップ5か年計画」と題した育成強化の方針を掲げました。
2027年までにスタートアップ企業への投資額を増やし、創業を促進しようとする取り組みで、将来的にはユニコーン企業100社、スタートアップを10万社創出することを目標としています。
国をあげてスタートアップ創出に力を入れることを表明したことから、今後ますます起業に関する取り組みはもとより、各種制度や助成金・補助金などの充実が期待されます。
5-2 高齢化の加速
周知の通り、日本はかつてない速さで少子高齢化が加速しており、業界職種によっては担い手不足が顕在化しています。
経産省のデータによると、廃業率が年々増加する一方で開業率は年々減少しており、これらを差し引くと、単純に事業者の数は減っていることになります。
これまで地域を支えてきた基幹産業が廃業せざるを得なくなると、その地域経済の衰退にもつながるため、行政としても黙って見ているわけにはいきません。
昨今では、事業承継を前提にした創業もあり、まとまった手元資金がなくても創業できる仕組みが出来つつあるように思います。
5-3 企業のブラック化が進み起業する人が増えた
かつては「24時間働けますか?」と謳った某CMのように、長時間の残業もいとわず働くことが美徳とされていました。
近年では「時代錯誤」と称されるような精神論や根性論が社内風土として醸成され、会社や上司の指示に従い、無理難題を押し付けられても最後まで我慢強くやりぬくことを求められていた気がします。
しかし、こうした働き方は働く人々の心身を確実に蝕み、やがては自殺者を出すなど、大きな社会問題になりました。
近年は国や企業をあげて、残業時間の抑制やライフワークバランスの充実などの「働き方改革」に取り組む企業が増えたと思いますが、個々人の仕事に対する価値観や考え方も確実に変わりました。
さらには、コロナ渦による影響で、業界職種によってはリモートワークが一般化しつつあり、今後は時間や場所に拘束されない働き方が徐々に浸透していくと思います。
昨今、企業によっては副業を推進していますが、今後はひとつの会社に依存した働き方や給与体系から、その時々に応じて自分で働きたい会社や仕事、職種を選びながら生計を立てるといったスタイルが普及するかもしれません。
まとめ
会社に属していても、起業したとしても、仕事をする上では、人と人との関係性(人間関係)は切っても切れません。
しかし、思った以上に会社や組織特有の煩わしさが自らの足を引っ張っていると感じているのであれば、今一度自らの働き方や将来について考えてもいいと思います。
私は仕事を「自己実現の場のひとつ」だと捉えています。
仕事を通じてどうなりたいのか、なりたい自分になれるのか、それを叶える仕事は何かを考えた時、その会社で頑張る、転職をする、思い切って起業するなど、様々な選択肢があると思います。
起業はあくまでも自己実現のための選択肢のひとつにすぎません。
しかし、実に様々なことを自分主導で進めていく必要があることから、個人としてのスキルは、間違いなく高まります。
終身雇用制度が崩壊し、将来的に満足な年金や退職金が受け取れない可能性がある中で、起業によって得たスキルや経験、知識が、自らの生計を助けることになります。
かつての起業と言えば、まさに退路を断つくらいの覚悟で臨むことを求められていました。
しかし昨今は「週末起業」と呼ばれる方法もあるくらい、そのハードルや難易度は低く、誰にでもチャンスがあり、さらに起業するメリットは沢山あります。
後悔しないように時には思い切った決断も検討してみましょう。
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