美容室の運転資金はいくら用意しておくべきなのか、もし運転資金が不足した場合、どうやって調達すればよいのか。
美容室の健全な運営を考えると、運転資金における不安は付き物でしょう。
ここでは美容室の運転資金の目安から、5つの調達方法、管理の際に注目したい点を解説していきます。
運転資金による失敗をしないためのコツも併せて解説していますので、美容室の運転資金を適切に確保し運営していきたい方は注目の内容です。
美容室の運転資金とは?
美容室の運転資金について、まずは基本的な情報と、大体どのくらいの運転資金が必要になるかを把握していきましょう。
変動費と固定費に分けられる
美容室の運転資金は2種類に分けることができ、「変動費」と「固定費」です。
《変動費》…業務量や売上などに応じて変動する費用のこと。
- カラー剤・シャンプーなどの薬剤
- 備品など消耗品
- 業務委託費
- 雑費
など
《固定費》…業務量や売上に関係なく毎月必ず支払の発生する費用のこと。
- 店舗の家賃
- 水道光熱費・通信費
- 人件費
- 広告費
など
運転資金が具体的にいくらかかるかは、「変動費」と「固定費」の両方を正確に洗い出すことで把握が可能になります。
売上の9割以上が運転資金に
具体的な運転資金の金額は店舗によりますが、スタッフなどを雇って運営する場合、売上の9割以上が運転資金に持っていかれると考えられます。
特に店舗の家賃や人件費などといった、固定費に占める割合が多く、固定費だけでも売上の5~6割程度が一般的です。
開業時の6ヶ月分確保がポイント
売上の9割以上が運転資金となり、さらにそのなかでも5~6割が固定費と、たとえ売上が減少したとしても発生し続ける金額の大きいことを考えると、資金には余裕を持って準備しておきたいものです。
「毎月の利益だけでどうにかなるのでは」といった考えでいるのは危険です。
そもそも美容室を開業してから、経営が安定するまで半年以上はかかると言われています。
6ヶ月分の運転資金は確保しておき、初めのほとんど利益を期待できない期間も乗り越えられるような体制を整えておくことが重要です。
美容室の運転資金は5つの方法で調達
運転資金として、事前に余裕を持たせた資金の準備が必要とは分かりましたが、どのように調達すべきなのか、具体的な方法が知っておきたいですよね。
ここでは美容室におすすめな、運転資金の調達方法を5つご紹介していきます。
- 日本政策金融公庫の融資制度
- 地方自治体の制度融資
- 信用金庫のプロパー融資
- 商工会・商工会議所の融資
- 国の補助金・助成金
日本政策金融公庫の融資制度
まず第一に検討したいのが、日本政策金融公庫の融資制度です。
日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主を対象とし、事業資金の貸付を低金利かつ、無担保・無保証で行っています。
ここでは主に、個人事業主を対象とする「国民生活事業」の、美容室の運転資金調達時に頼れる制度を4つまとめてみました。
融資制度 | 対象者 | 限度額(運転資金) |
新規開業資金 | これから事業を始めるor事業開始からおよそ7年以内の方 ※税務申告を2期終えていない方は別途有利な条件あり ・原則無担保、無保証 ・税率の一律0.65%引下げ | 4,800万円 |
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連) | これから事業を始めるor事業開始からおよそ7年以内で、女性or35歳未満か55歳以上の方 | 4,800万円 |
振興事業貸付 | 生活衛生関係の事業を営む方のうち、振興計画の認定を受けている生活衛生同業組合の組合員 | 5,700万円 |
生活衛生改善貸付 | 下記2点に該当する方 ・生活衛生関係の事業を営む小規模事業者のうち、生活衛生同業組合などの長の推薦を受けた ・常時、従業員数が5人以下 | 2,000万円 |
運転資金として必要な調達額や、自身が対象となる条件を照らし合わせて、活用を検討しましょう。
日本政策金融公庫で資金調達を行うなら、資金繰りのサポートを強みとする税理士法人と即日マッチングが叶う、「CEOパートナー」を頼るのがおすすめです。
融資申請はもちろん、これまで何千人・何万人もの面談対策を行い、資金調達成功へと導いてきた確かな実績を持つ税理士法人を紹介してもらうことが可能です。
一人で資金調達に挑戦するより、遥かに審査通過率がアップするほか、事業計画書などといった提出書類の準備負担もかなり減るため依頼しない手はありません。
お問い合わせは完全無料、実際に融資が決まって実行されるまで手数料は一切発生しないので、安心して活用できるサービスです。
地方自治体の制度融資
地方自治体が主体となって提供する「制度融資」を頼るのもおすすめです。
制度融資は、地方自治体と民間の金融機関・信用保証協会の3者が連携のもとで行います。
主に中小企業や個人事業主を対象としており、普通だと民間金融機関から信用を得にくく審査通過のしづらい事業者であっても、信用保証協会が保証を行うことで借入のハードルが下がります。
保証料の支払いが必要となりますが、地方自治体による保証料の一部支援が受けられ、他のどの機関の融資制度よりも低金利で借入が叶うといったメリットがあります。
信用金庫のプロパー融資
近隣の信用金庫から、プロパー融資の貸付を受けるのも一つの手です。
プロパー融資とは信用保証協会を通さずとも金融機関から直接受けられる融資で、日頃から信用金庫との付き合いがあれば、審査に有利になる可能性が高まります。
一般的に限度額の上限などはありませんが、事業の財務状況などから厳しめに審査が行われるため、ある程度事業が軌道に乗ったタイミングで依頼するのがポイントです。
商工会・商工会議所の融資
商工会や商工会議所などといった経営支援団体を頼ることで、独自の融資制度を活用できる場合もあります。
たとえば日本政策金融公庫の融資制度「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」は、商工会や商工会議所などで経営指導を受けていることを条件とした、低金利かつ無担保・無保証の融資制度です。
経営支援団体を頼ることで審査通過が比較的容易になるほか、さまざまな経営指導を同時に受けられ、初めて1人で美容室を立ち上げる方にとって、非常に心強い存在となるでしょう。
独自の融資制度以外にも補助金や助成金など、併せて活用するとお得な制度についても案内が受けられるので一度チェックしてみるとよいでしょう。
国の補助金・助成金
国には補助金や助成金といった、融資以外にも事業者の資金調達を支援する制度が存在します。
補助金は経済産業省が、助成金は厚生労働省が主体となり提供している制度で、補助金はさまざまな事業が対象となるのに対し、助成金は雇用条件などといった労働環境の改善を目指す事業者を対象としたものになります。
ともに、貸付ではなく給付金といった扱いになるため、返済義務は発生しません。
補助金は審査通過を経てはじめて受給が可能となりますが、助成金には審査が存在せず、条件に該当していれば受給が可能です。
ただし双方ともに、公募数が国の定めた予算をオーバーしてしまえば、審査に問題なかったり、条件をクリアしていたりしたとしても、受給が叶わないこともある点に注意です。
美容室の運転資金の管理における注目点
運転資金の管理ミスなどにより、美容室の経営が傾くような羽目にならないためにも、管理には気を遣って行いたいものです。
運転資金の管理における注意点をピックアップしましたので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- キャッシュレス決済の入金タイミング
- 各税金の納税タイミング
- 融資利用時の返済タイミング
キャッシュレス決済の入金タイミング
近年、インバウンド対策などによる国の施策により、キャッシュレス決済はますます普及しています。
美容室でも現金払いのみの対応というのは今や珍しく、クレジットカードや電子マネーによる支払いが可能な店舗がほとんどでしょう。
顧客獲得のためにもキャッシュレス決済への対応は必須とも言えますが、仕組み上、決済事業者を経由して決済が実現するために、事業者のもとへ現金として入金されるのにはタイムラグが生じます。
帳簿上では利益が発生して黒字となっていても、手元に現金としての資金がなく、運転資金の運用に支障が出る可能性があります。
黒字倒産を招かないためにも、入金タイミングを考慮した資金管理が必要と言えます。
各税金の納税タイミング
個人事業主として美容室を経営する場合、所得税や住民税、国民健康保険料、個人事業税などといった各種税金、さらに課税事業者の場合は消費税の納税義務も発生します。
もし法人として美容室を経営している場合は、法人税や消費税、事業所税などといった事業特有のさまざまな納税義務が発生します。
税金は滞納してしまうと事業全体の信用力が低下し、資金調達時にも審査で不利になるため、急な支払い請求の来やすい納税に備えて事前の情報収集と計画的な資金管理が必要です。
融資利用時の返済タイミング
運転資金を融資によって調達した場合、その返済タイミングも必ず把握しておくべきです。
万が一返済を怠ってしまうと、遅延損害金や延滞利息などといったペナルティが発生して資金を圧迫するとともに、金融機関からの信用を失うこととなってしまいます。
信用を失うと今後の運転資金の調達が難しくなってしまうため、滞納などをしてしまいそうなときは早めに融資先の金融機関まで相談しましょう。
美容室の運転資金で失敗しないために
美容室の運転資金に関すること、具体的には変動費や固定費の資金繰りにより失敗することがないよう、ここでご紹介する3つのポイントは押さえておきましょう。
- 小規模に資金をかけず始める
- 固定費の見直しを行う
- 資金計画を慎重に立てる
一つずつ解説を行います。
小規模に資金をかけず始める
美容室には複数のスタッフを抱えるところもあれば、1人の美容師が運営するところもあります。
これから美容室を開業するのであれば、まずは1人もしくは少人数の仲間内で開業すると、大きな運転資金を必要とせず、管理が比較的簡単になるためおすすめです。
多くのお客様を一度に来店させたい夢があったとしても、まずは小さく始めて、コツコツと利益を生んだ上で店舗拡大へつなげられるのがよいでしょう。
固定費の見直しを行う
運転資金の大部分を占める固定費は、業務量や売上の増減に関わらず、必ず決まった費用の発生する項目です。
運転資金をなるべく低く抑えるためには、固定費を見直すことで本当に必要な金額のみ支払うよう調整することが必要不可欠です。
水道光熱費や通信費などを必要なしに高額なプランで契約していないか、ほとんど流入のない広告を運用し続けていないかなど、毎月の支払に無駄がないかを精査して積極的に削減していきたいところです。
資金計画を慎重に立てる
運転資金の全容を一目で把握できると、毎月の支出が明確になるとともに、固定費の削減できる部分もすぐに見つけることができます。
とはいえ、資金計画を立てることは簡単ではない上に、間違った数字で作成してしまうと適切な資金管理ができずに意味のないものとなってしまいます。
資金計画は、CEOパートナーで出会う税理士法人の担当者とともに作成するのがおすすめです。
資金調達の専門家による精度の高いアドバイスが受けられることで、美容室の指標となる計画が少ない負担で完成するはず。
健全な財務状況で美容室を運営していく近道となるでしょう。
まとめ
美容室の運転資金として、店舗の規模にもよりますが毎月売上の9割以上を充てる必要があるとともに、そのうち5~6割は固定費として必ず支出が発生します。
運転資金の負担により美容室の経営が傾くことのないよう、3つのタイミング(キャッシュレス決済の入金タイミング、各税金の納税タイミング、融資利用時の返済タイミング)を管理時の注目点とするとともに、資金繰りで失敗しないポイントを押さえた、適切な運用が重要です。
とはいえ一人で運転資金への悩みや課題を解消していくのは困難で、リスクも高いと言えますので、おすすめはCEOパートナーなどといった専門家サービスを頼ることです。
資金調達サポートを強みとする税理士法人と即日でマッチングが叶い、実際に調達が完了するまでは手数料無料で頼れますので、少しでも不安のある方は一度気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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