「開業費の仕訳ってどうやるの?」と疑問に思っている方は多いはず。
開業費の範囲を広げる方法を知れば、節税効果が格段にアップします。
この記事では、開業費として認められる具体的な費用やその仕訳方法を徹底解説します。
読んだ後には開業費を活用した節税対策がバッチリ理解でき、実際の帳簿付けにも自信が持てるようになります。
開業費の仕訳は開業前と開業後でまとめてOK!
では早速、開業費の仕訳方法について解説していきます。
個人事業主と法人ではその方法も異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
開業費は明細ごとが理想
開業費の仕訳は明細ごとに入力するのが望ましいとされています。
しかし、開業費の内訳をまとめて計上している場合などは、ひとまとめにして入力しても問題ありません。
その際の注意点としては、計上した時の明細とその金額の根拠となる領収書や明細書を保管しておくことです。
さらに、開業時と開業後では書類を分けて管理することも忘れないようにしましょう。
開業費の仕訳例【個人事業主】
個人事業主が開業費を活用する場合は、下記のような書き方をする必要があります。
(例)6月1日開業予定Aさんの場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
開業費 | 10,000円 | 元入金 | 10,000円 | 5/28 開業のためのセミナー参加費用 |
開業費 | 58,000円 | 元入金 | 58,000円 | 5/30 パソコン購入費用 |
こちらは、6月1日に開業するために必要な費用を明細ごとに入力した表です。
個人事業主の場合は、開業前に事業用の現金がないために「元入金」として計上しています。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
開業費 | 68,000円 | 元入金 | 68,000円 | 開業準備 別紙明細 |
まとめて入力する場合は上記のように1行にまとめて仕訳をします。
概要欄には「開業準備 別紙明細」などと記載し、その根拠となる領収書や明細書を準備するようにしましょう。
開業費の仕訳例【法人】
法人の場合の仕訳方法も、個人事業主とほとんど変わりません。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
開業費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 | 5/28 開業のためのセミナー参加費用 |
開業費 | 58,000円 | 現金 | 58,000円 | 5/30 パソコン購入費用 |
個人事業主と異なるのは、貸方勘定科目が現金としている部分です。
まとめて入力する際も同様に、摘要部分には「開業準備 別紙明細」と記載をしておいてください。
開業費の会計処理のやり方
では、開業費を会計処理する場合はどのようにしたら良いのでしょうか。
仕訳例も含めて、解説していきます。
開業費は原則として「繰延資産」
開業費は、「繰越資産」として分類して計上するのが一般的です。
繰越資産とは、企業や個人事業主から発生した支出のなかで、その効果が1年以上に及び年度をまたいで続くもののことをいいます。
出費は一時的ではあるものの、長期間その効果を受けられるので資産として計上した上で数年かけて費用として償却することが可能です。
翌期以降は費用化にする
開業費が費用として償却できるようになるのは翌期以降です。
繰延資産は毎年一定額を償却するという決まりはあるものの、中小企業に関しては償却額や期間は自由とされています。
そのため、開業1年目で利益が少ない時に費用化するのではなく、数期後の売上が立ってきた頃に費用として計上することで節税効果をもたらすことができるのです。
繰延資産の仕訳例
では、繰越資産はどのように仕訳をしたら良いのでしょうか。
その方法についても例をもとに解説していきます。
(例)12月決算の会社を6月に作った場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
開業費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 | 5/28 開業のためのセミナー参加費用 |
開業費 | 58,000円 | 現金 | 58,000円 | 5/30 パソコン購入費用 |
12月決算時
本年の決算仕訳として、開業費20,000円を償却(未償却残高は翌期以降に繰り延べ)
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
開業費償却 | 20,000円 | 開業費 | 20,000円 |
開業費はこのように、決算時に開業費償却として計上すれば償却可能です。
未償却部分(このケースでは38,000円)は翌期以降に回せるので自由に節税対策ができます。
仕訳する際の3つの注意点
ただし、何でもかんでも開業費として計上できるわけではありません。
節税効果も期待できる一方で、注意しておかなくてはならないこともあります。
そのケースを3つ挙げていますので、こちらも事前に確認しておいてください。
10万円を超える固定資産
原則として、10万円を超える固定資産は資産として計上しなければなりません。
IT・WEB分野で開業を目指すという方は、専門的なソフトウェア購入に数十万円から数万円もの費用をかけることもあるでしょう。
しかし、たとえそれが準備期間に購入したものでも、10万円を超えれば開業費として認められる可能性は極めて低いです。
高額な固定資産は減価償却をし、購入費を数年に分けて経費計上する必要があります。
開業費として認めらないモノ
資産の金額以外にも、開業費として認められないものはいくつか存在します。
- 事務所の家賃
- 水道光熱費
- 商品や材料の仕入れ費
- 従業員の給料
これらは事業を営むために必要不可欠な経費です。
しかし、資産を取得するための経費という位置づけになってしまうので、たとえ開業前にかかった費用でも開業費として認められるのは難しいでしょう。
領収書が残っていないもの
さらに、購入履歴やどこで支払いが行われたのかの根拠が分からない領収書や明細書がない場合も、開業費として計上できません。
本当にその費用が開業のために必要な支出だったのかを証明するため、そして後々の節税のためにも領収書や明細書は非常に大切です。
紛失しないようにきちんと保管しておきましょう。
開業費でよくある質問
開業費の概要や処理方法などは段々と理解していただけたでしょう。
こちらでは、開業費にまつわるよくある質問をまとめてみました。
計上する際に多くの人がぶつかる疑問なので、一つひとつ確認しておきましょう。
いつからさかのぼることができる?
まずは、開業費はどのくらい前から計上できるのかという点です。
こちらは法律などで決まった明確な期間があるわけではありません。
税務署が適正と判断すれば開業費として認められるので、納得させられる説明ができれば問題ないでしょう。
ただ、認められる目安としては半年から1年程度前までとされています。
そのため、この期間以前にかかった費用を開業費と計上するのはハードルが上がると認識しておくといいでしょう。
個人事業主は開業費に計上できる?
開業費が認められるのは法人だけではありません。
個人事業主であっても開業費として計上可能です。
法人と同様に、開業のためのセミナー参加費用やパソコンなどの購入費用などは開業費として認められます。
一方で、10万円以上するものや家賃といった費用も、法人と同じく開業費にすることはできません。
個人と法人で認められる範囲に違いはほとんど見られませんが、迷った場合は税理士に相談してみるといいでしょう。
開業費の仕訳の入力方法は?
開業費は仕訳帳と減価償却資産の一覧表に必要事項を入力する必要があります。
仕訳帳から開業費の項目を選択して日付や金額を入力したら完了です。
減価償却資産台帳には、繰延資産の該当欄へ必要事項を入力してください。
年度末には、開業費(繰延資産)から経費へ振り替える処理を行うので、その際は決算仕訳から開業費償却を選択して入力しましょう。
開業費は5年以上償却できる?
一般的に開業費の償却期間は5年といわれていますが、必ずしもそうではありません。
均等償却しなければならないというルールもなく、多くの人がその年によって償却額を変更する任意償却の形をとっています。
任意償却であれば、開業後5年を経過した未償却残高も経費として計上可能です。
まとめ
開業費の仕訳についてのルールやメリット、注意点などを解説してきました。
ただし、こちらで解説したのはあくまでも一般的なケースなので実際に実行してみると上手くいかないということも多いでしょう。
それぞれの置かれている状況などによって対応方法は異なります。
この場合はどうしたら…と迷った際には、CEOパートナーに相談してみてはいかがでしょうか。
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