法人会社の設立をしようとする際ほとんどの方は株式会社での設立を考えるはずです。
しかしここで声を大にして伝えたいのが合同会社での会社設立です。
特に初期費用やランニング費用を抑えたい方には是非合同会社での会社設立をお勧めします。
アメリカでは主流となっている合同会社ですが、日本では「西友」が2015年まで合同会社であった事は有名なもののいまいち馴染みがありません。
起業時に潤沢な資金を誰もが持っているわけではありません。
限られた資金でのスタートアップを余儀なくされている方へお勧めの合同会社の実態を今回は紐解いていきます。
1:合同会社とは
ここでは合同会社について説明していきます。
1-1 合同会社とは出資者と経営者が同一になる会社
合同会社は、2006年の会社法改正に伴い導入された会社形態です。
会社を設立するにあたって出資を募るという点では株式会社と同様ですが、合同会社の場合、経営に関する権限は出資者(有限責任社員)が持ちます。
そのため、経営に対する重要な取り決めなどは、基本的に出資者同士の合意に基づいて行われます。
1-2 株式会社との違い
株式会社の場合、株式を発行して広く出資を募り、株主が出資額に応じて株式を取得し配当を得るという仕組みのもとに成り立っています。
株主は言うなれば「会社の実質的な所有者」であり、購入した株式の数に応じて会社の経営に関与することができます。
株主総会によって取締役が選ばれ、取締役会で会社の代表者(代表取締役)が選ばれ、会社の経営を担います。
そのため、会社の所有権と経営権は原則として分離されており、経営に関する意思決定は、株主の同意がなければ行えません。
一方で合同会社の場合は、出資を募るという点は株式会社と共通していますが、経営は出資者同士の合意に基づいて行われるため、意思決定スピードは株式会社よりもスピーディーと言えます。
1-3 法人税は株式会社と同じ
株式会社と合同会社は、税法上では普通法人として扱われます。
したがって、納める税金の種類や計算方法、税率に違いはありません。
起業間もない段階や、小さな規模で事業を進めていくのであれば、合同会社の方が適していると言えそうです。
関連記事:【徹底比較!】会社設立(法人)と個人事業主の7つの違い!
1-4 合同会社はアメリカに多い
事業を行う組織体として、会社(corporation)、組合(partnership)などがあります。
このうち、会社の持つ法人格と有限責任制、組合の持つ定款自治の徹底という性質を兼ね備えたものとして、1977年にアメリカ・ワイオミング州で、LCC(Limited Liability Company)が制定されました。
これが合同会社の起源とされています。
大きな特徴としては、法人課税か構成員課税、いずれかを選べる「チェック・ザ・ボックス規則」の導入です。
構成員課税を選んだ場合、組織体自体に課税が行われないというメリットがあるため、アメリカでは急速に普及しました。
但し日本の場合、合同会社は「法人格」とみなされ、法人税が適用されるため、アメリカのような構成員課税は認められていません。
1-5 AmazonやAppleも合同会社
アメリカの主要IT企業のうち、Apple、Amazon、Googleの日本法人は、合同会社の形態を採っています。
主な理由としては、
①スムーズな意思決定が可能
②親会社の知名度ならびにその子会社であることから、上場の必要がない
③アメリカの税法上の理由で、構成員課税が認められる
などが挙げられます。
2:合同会社のメリット
合同会社を設立することによるメリットを、主に株式会社との比較で紹介します。
2-1 会社設立費用が安い
株式会社の場合、定款作成、公証人の認証、謄本代、登録免許税など、設立に際して約25万円程度の費用がかかります。
一方で合同会社の場合、これら費用は株式会社の半分か、内容によってはそれ以下で済みます。
2-2 利益配分の設定が自由
合同会社は定款自治(定款による自由な自治運営)を可能としており、定款によって特定の取り決めをすれば、出資の割合や比率にかかわらず、自由に利益の配分が可能です。
2-3 決算を公表する義務がない
株式会社は決算毎に、決算書の内容を漢方や新聞、インターネット等で広告することが求められています。
合同会社の場合、合併や登記変更などについては公告する義務はありますが、決算については公告の義務はありません。
2-4 定款の認証がいらない
株式会社の場合、定款を作成して公証人の認証を受ける必要がありますが、これは資本金の額に応じて3〜5万円程度かかります。
一方で合同会社の場合は、定款認証にかかる手数料は発生しません。
2-5 意思決定がスピーディー
株式会社は所有と経営が分離しており、株主総会、取締役会、監査役など、会社の規模に応じて様々な機関の設置が必要になります。
経営に関する意思決定の多くはこれら機関の承認が求められるため、必ずしもスピード感を持った意思決定がされるとは限りません。
一方で合同会社の場合は、所有と経営が原則一致しており、定款自治(定款による自由な自治運営)を可能としています。
そのため、前述の利益配分の割合や経営に関する意思決定のスピード感は、株式会社のそれと比べて段違いに迅速と言えます。
3:合同会社のデメリット
では一方で、デメリットはどうでしょうか。
3-1 株式会社より信用度が低い
同じ法人格同士でも、株式会社と合同会社ではその周知度に違いがあります。
取引の際や融資を受ける際、更には人材を雇用するとなった際などに引き合いに出されますが、日本においては、株式会社の方が対外的な信用度は大きい(高い)と言えるでしょう。
3-2 出資者全員に経営の決定権がある
経営に関する意思決定権が構成員全員にあることは、いわば「諸刃の剣」と言えそうです。
各々が持つ経験や知識、技術などを持ち合わせ、共通の目標に向かって突き進むことができれば、まさに「無双状態」―向かうところ敵なしでしょう。
しかし、ひとたび意見が食い違ったり仲違いをしてしまうなどして、その関係性にヒビが入ってしまうと、人間関係はもとより、会社経営にも悪影響を及ぼしかねません。
3-3 株式会社ではないため投資家に出資をしてもらえない
広く出資を募ることができないため、長期的に見ると株式会社と比べて資金調達力に劣ります。
そのため、金融機関からの融資、各種補助金や助成金については、いち早くから情報を収集し、可能であれば早期申請を試みるなど、日頃からアンテナを張り巡らせておくことが必要です。
関連記事:独立で人気の仕事を知ろう!初心者の成功に100%必須の資金調達法
4:合同会社設立の流れ
事業内容が決まっていること前提で合同会社設立に向けてやることを整理してみました。
4-1 会社概要を決める
具体的には、
①会社名(商号)
②所在場所
③資本金額
④事業目的
が挙げられます。
特に気を付けたいのは③と④です。
③に関しては、法律上は1円でも可能ですが、登記事項に資本金額が記載されるため、取引内容によっては相手方から懸念を抱かれる可能性があります。
そのため、業務運営の観点から見れば多いに越したことはないでしょう。
④については、会社設立後に事業内容を変更した場合、定款の変更や登記をし直さなければならず、都度時間と費用がかかることから、将来的に事業を検討しているものも予め盛り込んでいいと思います。
しかし、あまりにも多くの目的が記載されていると、一見「何をやっているのか分からない会社」と敬遠される可能性があります。
業種によっては許認可が必要であることも頭に入れておきましょう。
4-2 法人の実印と定款の作成
法人の実印(会社代表社印)は、登記申請の際に必ず必要となります。
商号が決まったら、すぐに最寄りのはんこ屋さんなどで作成の依頼をしましょう。
お金に余裕があれば、銀行印や社印(角印)もあった方が便利です。
定款作成は合同会社設立の中で最も重要な内容と言えます。
中でも、定款に記載されていないと効力が生じない「相対的記載事項」については、充分な議論を重ねた上での記載が必要と言えます。
繰り返しになりますが、定款の作成にあたっては公証人による認証が不要なため、費用はかかりません。
関連記事:創業融資の必要書類は自分で作成するな!最大10種を専門家に丸投げ
4-3 出資金の支払い
定款作成後、設立登記申請までの間に出資金の払込を行います。
基本的には、会社を代表する者(代表社員)の預金口座に、社員全員が振り込みます。
その際、「全社員が引き受けた出資金額を個別に振り込む」ことに注意が必要です。
全部をまとめて振り込むと誰がいくら出資したのか分からなくなってしまい、やり直しが必要になりますので気を付けましょう。
なお、金銭でなく備品用品や車、パソコンなどの現物を出資する場合については、別途書類の作成が必要となりますが、これについては所定の書式がありません。
登記申請を行う前に、管轄の登記所で事前相談が望ましいと言えます。
4-4 法務局で申請する
最後に、法務局にて会社設立登記申請を行います。
設立登記申請書については、ネット上で各種フォーマットがダウンロードできますので、そちらを基に作成すればよいでしょう。
提出方法は直接窓口に提出するか、ネット等を通じてオンライン申請がありますが、初めての方であれば、専門家に依頼するか、直接窓口に赴いて提出することをおススメします。
専門家に依頼すれば、費用はかかりますがミスなく確実に行えますし、自分でやるとしても、窓口に行けば分からないことは直接聞けますし、最悪その場で速やかに訂正もできるため、ある意味効率的と言えるからです。
関連記事:【会社設立】サポートは税理士に依頼した方がいい3つの理由
5:合同会社の役職
ここでは、合同会社における社員の定義について説明します。
5-1 代表社員
業務執行社員を定めた場合、その中から代表社員が選ばれます。
代表社員は、合同会社を代表する権限を持ち、会社業務に関する裁判上または裁判外の行為をする一切の権限を持つことになります。
5-2 業務執行社員
定款にて業務を執行する社員として、「業務執行社員」を定めることができます。
ただし定款に定めた場合、それ以外の社員は業務執行をする権利を喪失します。
株式会社の場合は、取締役の任期が原則2年とされており、都度役員変更登記をしなければなりませんが、合同会社の場合は任期の定めがないため、定期的に役員登記を変更する必要はありません。
5-3 社員
世間一般でいうところの「従業員」ではなく、出資者であり経営者という扱いになります。
原則として個々の社員には裁量や意思決定権ならびに発言権を持っており、株式会社のそれと比較すると、経営に関する個々の関与が大きいと言えます。
まとめ
設立における費用を抑えられる点や、各社員に裁量や意思決定権が委ねられていること等から見ると、合同会社の仕組みは、今の時代に即した最適な組織形態ではないかと思えます。
ある程度の経営知識や資金力があり、自分の意見やアイデアを持って起業に挑戦したい方は、まずはひとりで始めることをおススメします。
やがて事業規模を拡大するにあたって、その分野におけるスペシャリストが集まり、同じ志をもって突き進むことができれば、非常に優秀な組織として一定以上の成果を上げられることでしょう。
しかし、人間同士のやり取りである以上、内容によっては意見がぶつかることも多々あります。
初めのうちは建設的な話し合いであったとしても、月日が経てばやがて感情的な話し合いになり、最悪喧嘩別れに終わってしまうこともあり得るでしょう。
個人的には、古くからの友人関係や兄弟間であれば、お互い腹を割って踏み込んだ内容の話し合いもできると思いますが、社会人になってから知り合う人との関係性はやはり勝手が違います。
ある意味「夫婦の関係性」に似ているのかもしれません。
経営に関する知識ノウハウだけでなく、日頃から良好な関係性を保つための取り組みが必要と言えます。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 関連記事:会社設立は株式会社より合同会社の方が絶対お得な5つの理由 […]