起業3年目を迎えると、具体的な課題が分からなくてもなんとなく「今のままで大丈夫なのかな?」と漠然とした不安を抱く方も少なくないのでは。まずお伝えしたいのが、起業3年目の生存率50%を突破したあなたはすごいです。自信を持ってください。3年目以降は事業拡大を視野に入れる方も増え、慎重に事業と向き合うには絶好のタイミングです。本記事では起業3年目にありがちな課題を洗い出し、3年目以降の行き先を決める6つの経営改善術をご紹介しています!また誰かに漠然とした悩みを相談したい方に向けて、記事の後半では無料で相談できるおすすめの専門機関を4つご紹介。一人でモヤモヤしながら事業を続けていくのは危険です。3年目に見直すべきポイントを理解し、成長発展を遂げる事業を目指しましょう!
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起業3年目で事業のこれからが決まる!
起業3年目は大事な時期です。どう活動するかで、これから事業が成功するか否かが決まります。まずは起業3年目の実態を理解しておきましょう。
3年目の生存率はおよそ50%
さまざまな調査機関や計算方法があるため公表される数字もさまざまですが、中小企業庁のデータからは起業3年目の生存率はおよそ50%と分かります。資金が底をつき始めるのが起業2年目〜3年目。3年目の時点で生き残る企業・消えていく企業がある程度ふるいにかけられるわけです。そのため本記事にたどり着いた起業3年目のあなたは、生存している時点で勝ち組と言えます。
3年目の平均月収は45.3万円
少し古いデータになりますが、2009年2月に日本政策金融公庫在籍の専門家が公表した論文「新規開業者の収入構造とその変化」によると、起業3年目の平均月収は45.3万円でした。調査対象となった起業家の直前の職業をもとに、もし起業しなかった場合の平均月収を算出すると39.9万円との結果でした。起業1、2年目の調査結果では起業後の平均月収が起業前と比較しマイナスとなっていますが、起業3年目を迎えると起業後の平均月収が5.3万円上回る結果に。事業収入が安定し始めるのは起業3年目とも言える結果ですね。
新規開業者の収入構造とその変化-p.5.図-4「開業前後の収入の変化(開業後の期間別)」
3年目から消費税がかかる
起業1年目・2年目は原則として消費税は免税となります。3年目からは課税事業者となり、消費税を支払う義務か発生します。ただし厳密に言えば基準期間である2年前の課税売上高が1,000万円を超えていなければ消費税を支払う義務は発生しません。起業3年目には起業1年目の課税売上高を把握し消費税を算出します。消費税の算出方法は2つ。
- 原則課税方式
- 簡易課税方式
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名称 | 計算式 | 特徴 |
原則課税方式 | (課税売上高×消費税率)-(課税仕入高×消費税率) | ●仕入にかかった消費税すべてを区分する必要あり ●計算結果がマイナス、つまり仕入にかかった消費税のほうが多い場合は消費税還付が受けられる |
簡易課税方式 | (課税売上高×消費税率)-(課税売上高×消費税率×みなし仕入率) | ●仕入にかかった消費税の区分必要がなく、事業ごとに定められたみなし仕入率を利用して計算する ●消費税還付は受けられない |
簡易課税方式のほうが計算が楽・年間で支払う消費税額の予測がしやすいといった特徴があります。しかし簡易課税方式にするには前年に届出が必要となるうえ、選択から2年間は簡易課税方式を続けなくてはなりません。売上より仕入にかかった消費税のほうが多くなりそうな場合は原則課税方式を選択したほうが、消費税還付を受けられてお得です。消費税の納め過ぎを防ぐためにも、迷ったら原則課税方式をおすすめします。経理が追いつかない・みなし仕入率で算出しても損しないと分かっている場合は簡易課税方式を選択して良いでしょう。
事業拡大を考える時期だからこそ慎重に
起業3年目は事業収入が安定し始める事業主が増え、事業の拡大を考える時期でもあります。ですが事業拡大には人件費や店舗の家賃など、一度に高額の資金が必要となるため勢いで着手するのはおすすめしません。もちろん事業拡大がうまくいけばそれだけのリターンが期待できますが、準備した資金が水の泡とならないよう慎重に進めていく必要があります。「やってみなければ分からない」と言われればそれまでですが、事業は何事も計画的に取り組むのが失敗の回避につながります。事業拡大のタイミングや資金について相談するなら、4章で紹介する専門機関をぜひ活用してみてください。
あなたの事業は大丈夫?4つのチェックポイント
「そもそも今の事業がうまくいっているかどうかすら分からない」「なんとなくこのままではダメな気がするけど何がダメか分からない」こうした思いを抱える方もいらっしゃるでしょう。そんな方に向けて、今の事業状態をざっくりとご自身で把握できる簡単な4つのチェックポイントを用意しました。ぜひ一度試しにチェックして、現状を振り返ってみましょう!
資金不足の傾向が見られる
起業3年目は資金不足の傾向が見られやすい時期です。起業前に調達した資金は1~2年で底をつき、まだ利益が安定していない事業主にとっては大変な時期となります。1、2年目は赤字が続いても踏ん張りどころですが、3年目を迎えても利益が上を向かず赤字が続いているなら事業の見直しが必要です。
商品・サービスにリピーターが付かない
自社の商品やサービスにリピーターが付かない状況は何らかの対策を打たなければ危険です。一定数のリピーターが付くとその分、継続的な収入が見込めますよね。会社を持っているにしろ、個人事業主として業務を請け負っているにしろ、顧客の有無は事業の存続率を大きく左右することになります。
計画をコロコロ変更している
その場その場で柔軟に計画を変更するのは一概に悪いこととは言えませんが、起業前に綿密な計画作成ができていればコロコロと変更する必要もなかったはず。頻繁に計画を変更しなければやっていけない事業というのは、そもそもの計画性がしっかりしていないと言えます。もちろん事業には想定外の問題も付き物です。それこそ新型コロナウイルスの流行による全国的な経済力の低下は誰にも予想できなかったことですよね。こうした突然の大きな影響はのぞき、ある程度の事業の見通しは立てた状態で起業したいものです。
なんとなくモチベーションが下がっている
起業3年目は1、2年目に比べモチベーションが下がってくるタイミング。始めのうちは「憧れの起業だ!頑張るぞ!」と燃え上がりますが、3年目にもなると運営に慣れてきてなんとなく面白味がなくなってきたり、深刻な場合は燃え尽き症候群になったりしてしまうことも。事業を淡々とこなすような状態になってしまうと、だんだん顧客のニーズが読めなくなり、こうした状況は利益にも現れ目に見えて右肩下がりとなってしまうでしょう。
【必見】分岐点を突破する6つの経営改善術
2章で実践した4つの簡単なチェックポイントに当てはまった方は、どう改善していくか?考えていかなければなりませんね。問題を洗い出したまま放置は避けたいものです。ここで6つの経営改善術を知り、ご自身の課題と照らし合わせてみましょう。
余計な固定費がないか見直す
資金不足を少しでも解消する一番簡単な方法は、余計な固定費を削ることです。急に月々の利益を上げることは難しいですが、固定費を見直すのはタダでできます。事業の固定費として考えられるのは以下のとおり。
- 人件費
- 家賃
- 通信費
- 光熱費
- 広告宣伝費
- 減価償却費
事業形態によるためここに挙げたものですべてではないですが、固定費による月々の支出は意外にも多いものです。人件費など、削るかどうか慎重に検討が必要な固定費もありますが、通信費や光熱費など、少しの工夫で変化が見られそうなものから見直すのがおすすめです。
補助金・助成金を検討する
資金不足を少しでも解消する方法として、補助金・助成金の利用が挙げられます。種類はさまざまですが、中小企業はもちろん、個人事業主の方も申請して受け取れる補助金や助成金が大きく分けて4種類存在します。
- 経済産業省管轄の補助金・助成金
- 厚生労働省管轄の補助金・助成金
- 地方自治体管轄の補助金・助成金
- その他補助金・助成金
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種類 | 例 | 特徴 | |
1 | 経済産業省管轄の補助金・助成金 | ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金など | ●起業応援、地域活性化、女性や若者の活躍応援、中小企業の発展、技術発展などが目的 ●審査あり、要件を満たしたうえでの応募 |
2 | 厚生労働省管轄の補助金・助成金 | キャリアアップ助成金、雇用調整助成金など | ●雇用促進、従業員のスキルアップなどが目的 ●審査なし、要件を満たしていれば受け取り可能 |
3 | 地方自治体管轄の補助金・助成金 | 創業助成事業(東京都)、大阪起業家グローイングアップ事業(大阪府)など | ●地域の産業発展などが目的 ●取り扱いのない自治体もある |
4 | その他補助金・助成金 | 大手企業、政府系金融機関、財団法人などが独自に展開するもの | ●審査がとても厳しく、受け取れるのは非常に優秀と評価された起業家数名 |
補助金・助成金には目的があり、目的に合わせて応募するものを選択する必要があります。種類が多いとどの補助金・助成金を検討すればいいか分からなくなってしまいますよね。また毎年同じものが用意されているとも限らず、「前年は募集されていたけど、今年は募集されていなくて応募できなかった」なんてケースも珍しくありません。そんな時に活用をおすすめしたいのが、中小機構の支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]。自治体別に募集中の補助金・助成金を検索できるほか、対象地域を“全国”で検索すれば全国どこからでも利用できる補助金・助成金がヒットします。ぜひ活用してみてくださいね。
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自社の市場価値を分析する
商品やサービスにリピーターが付かない・モチベーションが下がっているといった課題を持つ方にぜひ行っていただきたいのが、市場価値の分析です。自身の会社や個人事業主として展開している商品・サービスが、市場内でどういった立ち位置にあるかを把握します。
- 需要:見込み客から求められる商品・サービスかどうか
- 供給:求められる商品・サービスを提供できるだけの技術が備わっているか
起業における市場価値は以上の需要・供給のバランスから決まります。分析して需要・供給のどちらかに欠陥がある場合、バランスを取るにはどうすればよいか?思考を進め改善点を突き詰めていきましょう。
必要なスキルを持った人材を採用する
3-3で市場価値の分析を進めると、現状で不足している自社のスキルが浮き彫りとなるはずです。今いる従業員を教育してスキルを身に付けさせるのも一つの手ですし、既にスキルを持った人材を入社させることも、社内に新しい風を吹かせる良い機会となります。不足したスキルを補うため、またマンネリ化した社内の雰囲気を変えるためにも、新たな人材探しへ着手することはおすすめです。スキルを持った人材と出会うには次の5つのポイントを押さえておきましょう。
- スキルを証明できるポートフォリオや資格取得証の確認
- その人材の求める業務内容や働き方が自社とマッチするか確認
- 雇用条件への要求など、寄り添える部分は積極的に寄り添う
- なるべくフランクに、本音で互いの理想を話し合える環境を作る
- ただ応募を待つのではなく、身近に有望な人材がいないか人脈などを利用して探す
事業計画・資金計画を見直す
計画をコロコロと変更する必要がないよう、事業計画や資金計画をしっかりと見直しましょう。頻繁に変更しなければならない計画で事業を進めていたということは、そもそも起業前に立てた計画自体が十分でなかったと言えます。計画は一人で不安なまま作成するより専門家を頼るのが一番です。4章で3年目の起業家が気軽に相談できる専門機関をご紹介していきますね。
身近に頼れる専門家を見つける
繰り返しにはなりますが、専門家を頼ることで一人では解決が難しかった課題を乗り越えることが可能です。事業拡大に適切なタイミングの見極めや準備、事業計画・資金計画の見直しなど、日々の事業運営と並行して取り組むのはとても大変なこと。おすすめは遠方より、地域の専門家など、身近に頼れる専門家を見つけることです。直接会って話さなければ認識合わせの難しい相談内容は少なくないでしょう。気軽に何度も、安心して相談できる専門家を味方につけて今後の事業発展を目指しましょう。
起業3年目に頼れる!相談無料の専門機関4選
お待たせいたしました!ここでは3年目の起業家が無料で気軽に相談できる、専門機関を4つご紹介していきます!どの専門機関も政府が運営に携わる公的機関で、安心して利用できるのが特徴ですよ。
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よろず支援拠点
よろず支援拠点は全国47都道府県に拠点を持ち、起業家の多岐にわたる悩みをさまざまな分野の専門家たちが全面的にサポートします。抱えているのが漠然とした悩みでも大丈夫。悩みの本質を明確にし、適切な解決策を提案しています。“中小企業の経営者を「一人にしない」相談所”をテーマに、提示した解決策への取り組みから成果が出るまで寄り添ってくれる場所です。相談者の満足度は8割超え、毎年利用者が増加中の専門機関です。
こんな方におすすめ!
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商工会・商工会議所
商工会・商工会議所は地域の起業家が集まり地域発展と事業成長のためにさまざまな取り組みを行う場として明治時代に設立された、歴史ある公的機関です。町や村など小規模に活動しているのが商工会、市や特別区で比較的大規模に活動しているのが商工会議所で役割は同じと捉えて良いでしょう。地域の起業家であれば誰でも無料で相談できますが、会員になると専門家の巡回指導や福利厚生の支援、セミナーや交流会への参加など、受けられるサポートの幅が広がります。会員費は商工会で月額1,000円~2,000円程度、商工会議所で月額10,000円程度。商工会議所は入会金として別途3,000円が必要です。更に一歩踏み込んだ手厚いサポートを受けたい方はぜひ会員になることも検討してみてはいかがでしょうか。
こんな方におすすめ!
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中小機構
中小機構は経済産業省管轄の公的機関です。全国9ヵ所に地域本部を構え、よろず支援拠点の全国本部にもなっている大規模な相談窓口です。多様な支援メニューを用意し相談者の課題や悩みに最適な提案ができる環境を整えています。本部での対面相談はもちろん、オンライン上での相談も可能。「E-SODAN」では24時間AIチャットボットが対応してくれるほか、対応時間中であれば専門家と直接チャットで会話することも可能です。メールや電話での相談も受け付けていますので、ひとまずオンラインツールにて手軽に相談してみたい方におすすめと言えます。
こんな方におすすめ!
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中小企業119
中小企業119とは中小企業・小規模事業者に向けた専門家派遣をメインとしたサービスです。実際に専門家が訪れて現場を見ることで事業の課題を一緒に洗い出し、最適な解決策を提案しています。派遣回数は同一年度で最高5回、初回は無料ですが2回目以降は8,800円~17,600円の委託料がかかります。専門家の派遣が決まるまでは完全無料で公的機関に相談できますので、その点はご安心ください。複雑で、公的機関では解決できない課題を解決するために専門家派遣を行うのが中小企業119の役割なのです。
こんな方におすすめ!
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まとめ
起業3年目は事業に対して「このままでよいのか」漠然とした不安や悩みが出てくる時期です。収入の安定しない1,2年目を乗り越えて事業拡大を考え出したりと、事業の今後を決める大事な節目となるのが3年目なのです。これからの事業を成功へと導くには漠然とした不安や悩みを明確化し、見えてきた課題に向けて解決策を考えなければなりませんね。
- 資金不足の傾向が見られる
- 商品・サービスにリピーターが付かない
- 計画をコロコロ変更している
- なんとなくモチベーションが下がっている
本記事でご紹介している以上4つのチェックポイントを通して不安や悩みを言語化するとともに、専門機関を賢く頼って適切に解決策を提示してもらうのがおすすめです。ご自身で不安や悩みを明確化できなくても大丈夫。ご紹介した「よろず支援拠点」や「商工会・商工会議所」なら課題を一緒に明確化してくれます。3年目以降の方向性を決めるのは、今の皆さんの行動にかかっていますよ。目の前の課題から目を背けないで、一人じゃなく専門家の力を借りながら解決、事業を良い方向へ導きましょう。
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