初めての開業でも安心!個人事業主のための開業費償却方法入門編

初めての開業でも安心!個人事業主のための開業費償却方法入門編

開業を考えている方に質問です。

開業費の償却」という言葉を聞いたことはありますか?

なんだか難しそうに感じる文言ですよね。
実は多くの個人事業主が知らない、または活用していない節税の大きなチャンスなのです。

この開業費の償却を知っているかどうかで同じく個人事業主として開業した人たちと大きく差がつきます。

本記事では、開業費の償却について基本から丁寧に解説していきます。

今はまだ知らなくても大丈夫。
本記事を読んで開業費をマスターしていきましょう!

目次

開業費の定義

開業費と定義するものは、会計上「繰延資産」として扱われます。
この「繰延資産」として計上されたものは償却という形で分割して経費にすることが出来ます

これだけでは難しく聞こえますが、順を追って説明していくので参考にしてください。

まずは償却が出来る「開業費」についてを説明します。

開業費とは何か?

開業費とは、事業開始までにかかる初期費用を指します。

しかし、開業前にかかった費用のすべてが開業費になるのではなく、オフィスの敷金礼金は後で還付される可能性があるので開業費に含まなかったり、10万円以上の物は固定資産税になったりと、やや複雑です。

開業費として計上できる項目は次で紹介します。

開業費に含まれる具体的な費用

開業費に含まれる具体的な例は以下の項目です。

  • 設立費用:会社設立時の登記費用、定款の作成や認証費用
  • 調査費用:市場や競合、店舗の立地などの調査時の交通費や旅費、オフィス探しの交通費
  • 準備費用:店舗の改装や内装の工事費用、備品や家具の購入費用、資格や免許取得費用
  • 広告宣伝費:宣伝のためのチラシ、パンフレット製作の費用
  • 人件費用:開業前の従業員への給与、求人や採用にかかる費用、従業員の研修費
  • 事務費用:会社の印鑑や名刺の作成費、文房具の購入費

中には一部例外もあるので、必要に応じて専門機関に相談してください。

個人事業主における開業費の重要性

個人事業主にとって開業費の整理を管理を行うことは、経費の適切な計上に繋がり、節税のメリットがあります。

開業費の透明化をすることで融資などの資金調達の際に具体的な経費の説明が出来るので審査が通りやすくなる場合もあります

開業費は適切に計上し、正しく管理するのが成功への第一歩です。

償却とは何か?

開業費を償却すると一言で言っても、想像しづらいですよね。

開業費を償却をするメリットは多く、事業を運営していく中で重要な作業なので、必ず知っておく必要があります

償却の定義や必要性などを以下に詳しくまとめましたので、参考にしてください。

償却の定義と基本概念

償却は、開業までにかかった開業費すなわち繰延資産」を一定期間にかけて少しずつ経費にしていくことです。

わかりやすく説明すると、「開業時にすでに支払いも受け取りも終わっているが、これらがあることで今も利益を出せているので、少しずつ経費として計算し、損益のバランスを適切に管理して、計算する」ということです。

例えば開業時に作ったパンフレットが長期にわたって利益が生まれ続けているのであれば、それは単なる一時的な支出ではなく、継続的に利益を生むために必要な経費となります。

この経費を事務的に処理するために、パンフレットの費用を一定期間にわたって少しずつ経費として計上する作業を「償却」と呼びます。

なぜ償却が必要なのか

償却が必要な大きな理由としては、課税対策です。

償却をしないと開業費は一括で経費にならないため、課税所得額をを減らせずに税金を多く払うことになってしまうのです。

経費として計上されれば「事業のために必要な費用だ」ということで、課税所得から差し引かれ、払う所得税が減ります。

また、実際の経費を正しく計算することで事業の財務の正確性が出て、融資や借入がしやすくなる可能性が高まります。

開業費の償却方法

償却方法は大きく分けて

  • 定額法
  • 任意償却

の二つの方法があります。
これらの違いと、具体例を見ていきましょう。

償却の基本(定額法、任意償却)

では早速「定額法」と「任意償却」について説明していきます。

定額法

定額法は、毎年同じ金額を償却する方法です。決まった期間に毎年同額を経費として計上します。毎年同じ経費の計上をするので複雑な会計処理が必要なく、キャッシュフローの管理が簡易的になります。

任意償却

任意償却は、償却期間内に自分で決めた金額を自由に費用として計上します。財務状況に合わせて特定の年に多く計上したり、少なく計上する事も出来るのです。任意償却は柔軟性があり、より魅力的に見えますが、任意償却には複雑な財政処理が必要になることと、税法で認められる範囲があるので、専門的な知識が必要になります。

自身の知識が無くても任意償却のほうが自身の事業戦略に合うと考えるのであれば、税理士事務所との連携して一緒に税務処理をしていくのも有効な方法です。

CEOパートナーでは、起業者の希望に合った税理士事務所とのマッチングをしてくれるので、税務の不安がある場合は是非相談してみてください。

償却期間と具体的な償却例

定額法の場合、償却の期間は3年から5年です。

 例:開業費の550万円を5年の定額法で償却する場合
  1年目  110万円を償却
  2年目  110万円を償却
  3年目  110万円を償却
  4年目  110万円を償却
  5年目  110万円を償却

 5年間110万円を毎年経費として計上する。 

任意償却の場合も原則は3年から5年ですが、税務局への合理的な説明が通れば柔軟に期間を決めることも出来ます

例:開業費の550万円を6年の任意償却で償却する場合
  1年目  150万円を償却
  2年目  200万円を償却
  3年目    0円 を償却
  4年目   50万円を償却
  5年目  100万円を償却
  6年目   50万円を償却

このような違いがあります。

償却するときに必要な開業費の申告

確定申告には青色申告白色申告というものがあるのをご存じですか?

償却を計上する場合、どちらでも償却した額を計上できますが、どちらで申請するかによって税制の特典が変わってしまいます

ここでは青色申告と白色申告の違いについてまとめましたので参考にしてください。

開業費の申告手続き

開業費の申告手続きは、青色申告白色申告の二つの方法があります。

青色申告:特典が多いが、手続きが複雑

青色申告をした場合には税務的な特典が多く、開業費を含む様々な経費を最大65万円の特別控除を受けることが出来ます。
また、青色申告の場合は赤字を繰り越す事もできるので、1年目に赤字が60万円、2年目に黒字が40万円だった場合、2年目の40万円は1年目の赤字を繰り越し、利益分を相殺出来るのでその分の所得税がかからないのです。
赤字を繰り越せることは節税にも繋がります。

白色申告:特典は少ないが、手続きは簡易的

白色申告でも償却の計上は可能ですが、控除はほぼ無く、赤字の繰り越しも出来ません。
白色申告は原則的な確定申告に近いといえます。

税務的なメリットを考えた場合は青色申告のほうが良いですが、青色申請は先に申請が必要になることや、手続きがやや複雑になるので慎重に準備を進めてください。

必要な証拠書類の準備

青色申告と白色申告は必要書類も違います。

まず、青色申請を希望する場合には開業時であれば開業から2か月以内、その他の年であれば青色申告を行いたい年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。

書類や帳簿の不備があり青色申告の承認が下りないと、白色申告をすることになりますので注意してください。

青色申告は白色申告で必要になる書類にプラスし、複式簿記による帳簿をはじめ、総勘定元帳、固定資産台帳など、白色申告よりもさらに詳細な記録と管理がされた書類が必要になります。

白色申告では単式簿記による帳簿で、売上帳、仕入帳など、簡易的な書類のみで申告を済ませることが出来ます。

節税効果とメリット

最後に、ここまで償却の必要性や方法をお伝えしましたが、その節税効果とメリットについてより詳しく、わかりやすくまとめました。

最初は面倒に感じる事務手続きや会計処理も、やり方やメリットを知ることで前向きに取り組めるはずです。

開業費の償却による税負担軽減

開業した後、事業を始めて利益を得た場合、利益を得た金額(課税所得)によって所得税という税金がかかります。

日本は累進課税制度を採用しているため、高い利益を出すほど所得税も増えていくのですが、償却をした分の経費を計上することによって、課税所得の額を減らすことが出来るのです。

1000万円利益があった場合、この1000万円の課税所得にかかる所得税は33%の176万4千円です。

しかし、そこに50万円の経費を償却することで利益は950万円分しか課税所得にならないので、所得税は159万9千円になります。
償却をしたことで16万5千円も節税になっていることがわかります。

具体的な数字を見るとわかる通り、償却による開業費の経費化がどれだけ税負担の軽減になるかがわかります

長期的な財務管理の利点

財務管理をする際、収益の増減が激しいと、見通しを持った予算計画を立てにくくなります。

償却による開業費の経費化は、収益の増減を調整する役割もあるので、長期の財務管理がしやすくなるメリットもありますね。

そして償却をする際には事業の財務管理を細かく行うことになるので、結果的に自身の事業の財務を正しく理解することに繋がり、会社としての信頼を受けやすくなります

事業拡大の際の資金調達や、確定申告の際などには細かな財務管理が必ずプラスに働きます。

まとめ

償却は事業を進めていく中で多くのメリットがある大切な会計処理です。

まず償却をする前の段階として、開業の際に必要になった経費のレシートや領収書は必ず保管し、出来れば資産台帳として購入日や金額、耐用年数などを記録しておきましょう。

開業前に償却についての知識を持っておくことで最初から詳細に財務管理ができ、あとから大変な事務作業をする手間が省けるはずです。

財務管理が不安であれば、CEOパートナーで税理士事務所と連携し、書類の代行や、プロの手続きのサポートを受けながら進めてみてはいかがでしょうか。

開業費の償却についての理解がこの記事で少しでも深まれば幸いです。

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この記事を書いた人

過去に起業家の友人と些細なきっかけから会社を設立。当時得た知識とノウハウを活かし、現在は起業と会社設立に関する情報を発信中。趣味は旅行や推しを見ながら晩酌する事です。

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