派遣会社とは職業紹介事業の1つです。
派遣元となる人材派遣会社に登録をしている労働者を派遣先となる事務所に派遣するなどして、派遣先担当者の指揮命令のもとで労働場所を提供する雇用形態のことを指します。
そんな派遣会社ですが需要が高く、新規参入もしやすい事業になっています。
しかし、派遣会社を設立するには「融資」が必要不可欠。
一体なぜ派遣会社設立には融資が必要不可欠なのでしょうか。
本記事では派遣会社設立に融資が必要不可欠な訳を詳しくご紹介していきます。
記事の後半には派遣会社設立におすすめな融資や助成金、派遣会社設立の流れ、最後には成功するための5つのポイントも紹介していきます。
派遣会社設立を考えている方はぜひ参考にしてください!
派遣会社設立に融資は必要不可欠と言われる訳
派遣会社を設立するには、多額な資金が必要になります。
そのために、融資が必要不可欠と言われているのです。
資産ショートのリスクがある
人材派遣業は、派遣先の売上や経営状況によって資産ショートのリスクを抱えています。
資産ショートとは、収支のバランスが崩れて、費用の支払いができなくなることです。
たとえば、派遣先の経営状況が悪化すると、売掛金が回収できなくなったり支払いが滞ったりします。
とはいえ、派遣先で勤務した派遣社員の給料は派遣元が支払わなければならないので、状況によってはマイナス計上が続くことも考えられるのです。
いくつもの派遣先とやり取りをしてに派遣する人材が増えていくと、その分リスクは広がってしまうでしょう。
そもそも設立には純資産や預貯金が必要
派遣会社を設立する際には、下記の要件が求められます。
- 資産の総額から負債の総額を引いた「純資産」が2,000万円以上であること
- 純資産が負債総額の1/7以上であること
- 預貯金が1,500万円以上あること
上記の要件を満たして初めて、派遣会社の設立に必要な「労働者派遣事業許可」の取得が下りるのです。
会社をこれから立ち上げる方には、大きな負担としてのしかかるでしょう。
派遣会社自体がお金がかかる
さらに、派遣会社を運営するには事務所費やシステム費、通信費や広告費などの費用が多くかかります。
派遣社員の勤怠管理や給与明細の発行を紙で行う場合は、その分の印刷費用なども必要でしょう。
飲食店のような仕入れ費用はかからないかもしれませんが、運転費用を見てみると大きなコストが必要といえます。
派遣会社設立におすすめな融資や助成金
では、派遣会社を設立するにはどのように資金調達をしたらよいのでしょうか。
ここでは、おすすめの融資や助成金について紹介します。
日本政策金融公庫:創業融資
創業間もない事業者におすすめしているのが、日本政策金融公庫の創業融資です。
日本政策金融公庫とは、資金調達が困難になりやすい中小企業や小規模事業者に向けて融資を行う公的な金融機関のことをいいます。
政府が100%出資しているので、安心して利用できるでしょう。
新たに事業を始める方または事業開始から2期経過していない方は、下記のメリットが受けられるのでおすすめです。
- 無担保・無保証人融資
- 利率を一律0.65%引き下げ
- 長期の返済可能
厚生労働省:キャリアアップ助成金
派遣社員をはじめとした、有期雇用労働者や短期労働者といった非正規雇用の労働者を対象に、企業内で正社員化や処遇改善に取り組んだ事業主に対して助成される制度です。
有期雇用労働者に対し、基本給の改定や賞与・退職金制度の導入、社会保険の加入などを行った場合、一定の金額が支給されます。
ただし、支給には定められた期間での処遇是正が必要です。
すぐに受け取れるわけではないので注意しましょう。
厚生労働省:人材確保等支援助成金
キャリアアップ助成金とともに、厚生労働省が打ち出している制度です。
労働環境の向上などを図る事業者や、事業協同組合に対して助成を行います。
制度のなかには、2024年5月24日から2025年3月31日までの間に新たに賃金制度を整備、改善した派遣元事業者に対して助成する「派遣元特例コース」もあります。
支給額は、5万円プラス派遣労働者1人当たり1万円の金額です。
派遣会社設立の流れや必要なもの
ここからは、派遣会社を立ち上げるための流れを解説します。
漏れがないように一つひとつ確認しておきましょう。
派遣元責任者講習を受講
労働者派遣事業を行う許可を得るためには、「派遣元責任者講習」を受講する必要があります。
派遣事業に関するあらゆる知識を専門家から教わる講習会であり、一度受講しておけば3年間は有効です。
「一般社団法人 日本人材派遣協会」や「公益社団法人 労務管理教育センター」といったさまざまな団体が講習を行っており、誰でも参加できます。
3年ごとに更新する必要があり、その際は有効期間が切れる30日前までに厚生労働大臣に許可有効期間更新申請を行ってください。
事業計画書を作成
創業する目的や資金の調達方法、マーケットの分析、今後の見通しなどをまとめた事業計画書も作成しなければなりません。
融資を受ける際にはほぼ必ず提出を求められる書類で、審査にも大きく影響するので丁寧に作成しましょう。
ポイントとしては、顧客のニーズに対応できる人材を確保する方法や人材の教育体制などが挙げられます。
人材業界全体を見ても、雇用の安定化や失業率の抑止、多様な働き方についての捉え方など記載しておきたいテーマはいくつもあります。
事業の社会貢献性にも付随する部分であり、評価の対象にもなるのできちんとしたリサーチが必要です。
資本金を準備
お伝えした通り、派遣会社を設立するには一定の資本金が必要となります。
総資産から総負債を除いた2,000万円を用意しなければなりません。
事業開始までに手元になければ厚生労働省からの許可が下りないので、早い段階から資金を準備しておきましょう。
なお、職業紹介事業(有料)であれば資本金500万円から事業開始可能です。
定款等を作成・準備し申請
続いては、会社を設立するにあたって必要な申請物などを用意します。
会社の基本情報や規則を記載した定款を作成し、登記に必要となる印鑑登録を行ってください。
続いて、定款を認証して資本金の払い込みをします。
最後に、会社の本店所在地にある法務局に書類一式を提出すれば登記は完了です。
労働者派遣事業の許可申請
労働局に、事業の許可申請を行いましょう。
申請書類を提出した後は、以下の工程で審査を行います。
- 申請書の調査
- 事業を行う場所の調査
- 厚生労働省による書類確認
- 厚生労働省による労働政策審議会での諮問
すべてのフローが終わるまで、2~3か月程度見ておくとよいでしょう。
また、実体がないと許可申請ができないため、先に会社登記しておいてください。
成功のための5つのポイント
最後に派遣会社を成功させるために必要な5つのポイントを解説します。
こちらもぜひ参考にしてください。
事業計画書は細かく丁寧に
派遣会社を立ち上げるための莫大な資金を集めるには、融資を活用するのがセオリーです。
しかし、融資を受けられるかどうかは作成する事業計画書にかかっているといっても過言ではありません。
事業計画書の内容が穴だらけだった場合、融資をするかどうか決める審査担当者も「本当に事業をやっていけるのだろうか」と不安になってしまうでしょう。
また、事業計画書は誰が見てもわかりやすいようにしてください。
そのためには、図や表を使用するのも有効です。
丁寧なリサーチはもちろん、見やすさにも気を配って作成しましょう。
ニーズを理解し、それに合わせた対応をする
派遣先が求める人材を派遣できなければ、自ずと需要はなくなっていくでしょう。
たとえば、Excelが使用できる事務スタッフを求めている企業に、タイピングがやっとという人材を派遣してもミスマッチが生じます。
一方、関数を使用できる人材を派遣するなどすれば、ニーズ以上の期待に応えられるかもしれません。
また、専門性に対するニーズは年々高度化している傾向にあるため、より高いスキルを身に付けた人材の確保や育成制度に注力することをおすすめします。
ファクタリング等の資金調達方法も活用する
資金調達には、融資だけでなくファクタリングも有効です。
ファクタリングとは、会社が保有する売掛債権をファクタリング会社が買い取って現金化することをいいます。
最大のメリットは、資金調達までのスピードが速い点です。
売掛金が回収できない、または遅れている場合に活用すると安定的に入金ができます。
また、未回収の場合のリスク回避にもなるので、売掛金を保有しがちな派遣会社にはおすすめです。
派遣会社の要件や派遣できる業種を正しく理解する
派遣会社を設立するには、下記のような守らなければならない要件が存在します。
- 「純資産2,000万円以上」「預貯金が1,500万円以上」「純資産が負債の1/7以上」である
- 社内に派遣元責任者が在籍している
- 事業所の面積が20㎡以上かつ風営法の規制対象となる店が近隣にない
- 労働者派遣事業に基づき、適切な事業運営を行っている
- 個人情報を適切に管理している
また、派遣可能な業種には制限があります。
下記のような専門業務の場合は、基本的に派遣禁止となっているのであらかじめ念頭に置いておきましょう。
- 港湾運送
- 建設
- 警備
- 医療関係
- 士業
さらに、2015年の派遣法改正の際に、個々の技術やスキルで成果が大きく変わる「専門26業種」という言葉が話題になりました。
そもそも、派遣先が派遣社員を連続して受け入れられる期間は3年までという決まりがあります。
ただし、「専門26業種」は例外としてその3年ルールが撤廃されていたのです。
そのルールが見直されたのが、2015年の法改正でした。
「専門26業種」が以前ほど専門性を持たなくなったと判断され、他業種同様3年ルールが付与されることとなったのです。
このように、派遣にはさまざまな決まりがあり、時代の流れによって法律も変化していくため常にアンテナを張っておくことが重要となるでしょう。
資金繰りを怠らない
派遣会社の性質上、資産ショートの可能性は高いと言わざるを得ません。
新規参入の場合はなおさらなので、余裕を持った資金繰りを行うためにも融資などで準備をしておくとよいでしょう。
売上は上がっているのに、収益が手元に入ってこない黒字倒産になることも考えられます。
事業開始前から、きちんと対策を練っておきましょう。
まとめ
派遣会社を立ち上げるには、相当の資金が必要です。
事業開始後も、売掛金を回収できないリスクはつきまとうので融資などで事前の資金調達をしておきましょう。
資金調達にお困りの方は、CEOパートナーに相談してみてください。
創業融資に強い税理士を紹介するので、どんなお悩みも即座に解決してくれるはずです。
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経験豊富なプロが作成を手伝ってくれるため、審査通過率も上がるはず。
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