決算のやり方が知りたい。「法人設立を目前としている」「会社を設立したが決算をまだ迎えていない」といった方は、決算のやり方は頭に入れておきたい知識として三本の指に入るでしょう。
やり方次第で、自分一人でやってしまうのか、それとも外部に任せるべきなのかといったところの判断も行う必要がありますよね。
ここでは決算のやり方について、そもそもなぜ決算を行う必要があるのか、そして一般的な8ステップの流れや行う時期・タイミングをご紹介していきます。
併せて決算のやり方について気軽に税理士法人まで相談できるサービス「CEOパートナー」をご案内いたしますので、一通り内容に目を通した上で、外部を頼ったほうがよさそうであればぜひ活用してみてくださいね。
決算とは?なぜやるのか
決算のやり方を知る前に、そもそも決算はなぜやるのか、その役割を見ていきましょう。
決算をやる理由と役割を事前に知っておくことで、適切な意識を持って取り組めるはずです。
正しい税額を算出するため
当然ですが、会社には納税の義務があります。
支払う税額はどのように定められているかというと、決算で明らかになった会社の所得金額をベースに算出されています。
法人税・消費税・法人事業税・法人住民税などといった税金を税務署に正しく申告し納付するために、決算は必要不可欠なのです。
決算公告の義務を守るため
会社には決算公告の義務があります。
決算公告とは、会社の財務情報を公に開示することであり、会社法440条にて定められています。
株主や債権者などといった外部の利害関係者に自社の経営状況を開示するのに、決算時に作成した決算書が役立つのです。
業績の分析と改善に役立てるため
決算によって自社の経営状況の可視化が自ずとできることから、業績の分析および改善に役立てることが可能となります。
会社の状況を数値面から把握できるため、過去から現在への変化が目に見え、客観的な分析へとつながり将来的な事業成長の指針として役立つでしょう。
金融機関からの借入時に必要なため
会社を長く経営していくなかで、資金調達を必要とする機会は決して珍しくないでしょう。
民間銀行や日本政策金融公庫などといった、金融機関から融資を受けて資金調達するのが一般的です。
会社が融資を申請する際、必要書類として必ず決算書の提出が求められます。
決算書を通して、金融機関側は会社の経営状況を判断し、融資を実行するか否かを審査するのです。
決算のやり方を8ステップで確認
ここから具体的に、決算のやり方を見ていきましょう。
流れは大きく8ステップに分けることができます。
1ステップずつ、やり方を詳しく見ていきましょう。
当期分の記帳を完了させる
決算を進めるには、当年度分の記帳をすべて完了させて、内容を確定させなければなりません。
記帳を完了させた上で、試算表や明細表を作成し実際の残高と照らし合わせながら内容の整合性を確認しましょう。
実地棚卸と資産・負債を確認する
実地棚卸とは商品など実際の在庫を数えて点検し、数量や保管状態の確認を行う作業です。
実地棚卸により把握している実際の数と、資産や負債といった帳簿上の記録に相違が生じていないかをここで確認します。
確認のしかたとして主に次のような調査があります。
- 預金の残高証明書や当座預金の取引照合表と、預金の記帳が一致しているかどうか
- 実際の現金残高と帳簿上の残高が一致しているかどうか
- 実地棚卸において商品・製品・仕掛品・材料までくまなく行われているか
- 売掛金・買掛金・未払金・未収金など残高の確認
- 未清算金と帳簿が一致しているかどうか
- 事業年度中に行われた固定資産の除却・移動などの確認
決算整理仕訳をする
決算整理仕訳とは、記帳した時点のデータと、決算時点でのデータにズレが生じた場合の、最終的な修正を行う作業です。
会社の規模や業種によってはかなりの業務負担を要する作業となるため、できるだけ早めに進めておくのがポイントとなります。
決算整理仕訳では棚卸や決算整理を済ませたのちにしか仕訳のできない、次のような項目を計上した上で数字を確定させていきます。
- 期末棚卸高の確定による売上原価の計算
- 取引先の状況、過去の実績から貸倒引当金の設定
- 固定資産の減価償却
- 経過勘定(未払費用・前払費用など)の確定と計上
- 有価証券の評価替え
- 貸倒引当金以外の引当金の見積りと計上
決算書の作成を行う
ここまでの作業による試算表に問題がなければ、いよいよ決算書の作成に移ります。
実は「決算書」という名称の書類を作成するのではなく、決算時の作成が必要な書類をまとめて「決算書」と呼んでいます。
株式会社の場合、会社法に基づいて次の書類作成を行います。
計算書類
- 賃借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
その他書類
- 事業報告
- 計算書類の附属明細書
- 事業報告の附属明細書
上場企業の場合
- 有価証券報告書
株主総会・取締役会で承認を得る
決算書は会社法により、定められている機関から承認を得てはじめて、完成となります。
株式会社は原則として定時株主総会を開く必要があり、一般的には年次決算の時期に取締役会と株主総会を開き、決算書の承認を得る流れとなります。
ただし例外として、会計監査人設置会社である場合は、取締役会の決議のみで決算書を承認とすることも可能です。
法人税の申告書を作成する
承認を得た決算書をもとに、納付すべき税額を算出して法人税申告書を作成します。
申告するのは法人税・消費税・法人事業税・法人住民税・地方法人税・特別法人事業税です。
法人税申告書は自力での作成が非常に難しく、税理士に依頼するのが一般的です。
税務署へ提出・納税を行う
法人税申告書が完成したら、税務署や都道府県税事務所など、各税金の申告先にそれぞれ提出と納税を行います。
会社の申告期間は原則として、「事業年度終了日=決算日の翌日から2ヶ月以内」と定められています。
余裕を持って速やかに手続きを行いましょう。
書類を一定期間保管しておく
決算書として作成した書類一式は、一定期間保管しておくよう法律にて定められています。
税法上では7年、会社法では10年の保管が原則です。
ただし保管の必要な書類は、種類や所得によって保管年数が異なるため、事前に確認しておきましょう。
決算をやる時期とタイミング
決算には適切な時期とタイミングがあります。
やり方が掴めたところで、実際に実行すべきはいつなのかを確認しておきましょう。
年度末の実施は必須
決算は必ず年度末に実施します。
納税額を確定する役割を持ち、法的義務が発生するため実施は必須です。
事業年度は設立時に自由に決めることができます。
一般的には3月を年度末としている会社が多いですが、繁忙期などを見極めた上で、都合のよい時期を設定しましょう。
年度末以外にもタイミングがある
年度末のほかにも、決算を行うとよいとされるタイミングがあります。
それぞれ一覧にまとめてみました。
実施タイミング | 必要性 | 実施目的・メリット | |
本決算(年次決算) | 1年に1回(年度末) | 必須 | ・納税額確定のため ・法的義務に基づく |
中間決算(半期決算) | 6ヶ月に1回 | 上場企業は必須 | ・経営の健全性がアピールできる ・法的義務に基づく |
四半期決算 | 3ヶ月に1回 | 任意 | ・投資家が投資判断の材料とする |
月次決算 | 1ヶ月に1回 | 任意 | ・年次決算時の業務負担分散が叶う ・融資審査の印象がよい |
2024年3月末まで、四半期決算は上場企業の場合、必ず実施するように定められていました。
しかし同年4月1日以降は義務が廃止となり、実施は任意となりました。
四半期決算や月次決算のように、任意の決算については投資家や金融機関などといった、会社の経営状況を細かく確認したい関係者がいる場合に実施します。
災害などやむを得ないときの延長申請
災害など、自身ではどうしようもない事象の発生により申告や納税が困難となった場合には、国税通則法により延長を申請することができます。
一方、経営上の裁量などにより申告期限に間に合わない事態が派生してしまった場合にも、延長申請を行うことは可能です。
例えば次のような場合が該当します。
- 3月末決算で6月に株主総会を招集する
- 会計監査人の監査が必要となり申告に遅れが見込まれる
こうした会社都合による延長申請に関しては、申告の延長は認められますが、納税の延長までは認められないために見込み納付を行います。
納付期限の超過でペナルティが発生する
延長申請の手続きを行わずに申告や納税に遅れが生じた場合には、本来の納税額に加え、「加算税」や「延滞税」が課されることがあります。
無申告時のペナルティとなるのが加算税で、本来の税額に対し5%~25%の税額が加算されます。
一方の延滞税とは、本来の税額に対して利子のようなものが課される仕組みです。
納付期限から遅れが2ヶ月以内の場合は原則として7.3%(or延滞税特例基準割合+1%)、遅れが2ヶ月以降となると原則14.6%(or延滞税特例基準割合+7.3%)の延滞税が発生します。
決算のやり方は税理士法人に相談すべき
決算のやり方を解説してきましたが、実際のところ、日々の業務があるなかで計上から書類作成までを行うのはかなりの業務負担と言えます。
大企業などで、決算業務を行うにあたっての仕組みや精通した人材の確立がなされていればよいですが、会社を設立して間もない場合や、小規模に運営している会社などが決算を行う場合は税理士を頼ったほうが何かとスムーズです。
税理士法人まで相談すべき具体的な理由をここで見ていきましょう。
決算にかかる手間が省ける
単純に、税理士法人を頼ることで決算にかかる手間を省くことができます。
手間が省かれると本業に集中できる上、決算時期にバタつく事態を回避し、余裕を持って会社の運営に当たれます。
余裕がなく期限を超過してしまうとペナルティを受けることにもなるため、迅速に決算を済ませるためにも、税理士法人を頼って効率を重視したいところです。
複雑な仕組みを理解する手間が省ける
決算は決して単純な作業ではありません。
会社の税金の仕組みは複雑で、税制の改正も頻繁に行われます。
特に中小企業の場合は優遇措置や補助金・助成金が数多く存在しており、社内で決算を完結させようとすると、有利な情報を見落として必要以上の納税を行う羽目になるといったことも充分に起こり得ます。
複雑な仕組みを都度理解するのにかかる工数は計り知れないので、税務を専門とする税理士法人に任せてしまうのが賢いでしょう。
申告ミスによるリスクが防げる
万が一決算に誤りがあり、申告ミスが発生してしまうとすべての作業を初めからやり直す事態となったり、税務調査が発生したりしてしまいます。
申告ミスは場合によってはペナルティを課される可能性もあり、事業自体に大きな影響を与えてしまうことも。
正しい知識がなく誤った申告をしてしまわないよう、最終確認だけでも税理士法人に行ってもらうことをおすすめします。
顧問契約で経営判断がスムーズになる
会社をスムーズに経営していきたいとなると、税理士法人まで顧問契約を依頼することも視野に入れたいです。
顧問契約を結ぶことで、常に専門的観点から経営アドバイスを受けられるようになります。
また、基本的な税務においてはもちろん、節税対策や資金調達において有利に進めていけることにもなります。
日頃から税理士法人によるケアがあるために決算業務の負担も非常に軽くなり、やり直しなどといった無駄な作業が発生する可能性も限りなくゼロに近づくでしょう。
健全に会社を経営していくためにも、税理士法人に決算のやり方を相談することはぜひ前向きに検討してください。
まとめ
決算のやり方は8ステップの流れで大枠を掴むことはできますが、いざ実行するとなると、一つひとつの作業は非常に複雑で手間がかかります。
とはいえ決算の実施自体に法的義務があり、申告や納税に期限が定められていることから、決算をやらないといった選択を取ることは残念ながらできません。
同時に、申告ミスをしてしまうとやり直しや税務調査など面倒なことになりかねず、正しく申告するに越したことはないのです。
必要経費と考えて税理士法人への依頼を前向きに検討し、スムーズに決算を乗り越えてくださいね。
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