「創業融資の借入には自己資金が必要」とよく目にしますが、そもそも自己資金とは何を指すのでしょうか。
今回は創業融資の借入に必ずと言っていいほど登場する自己資金について、詳しく解説していきます。
創業融資の希望者からダントツで頼られる日本政策金融公庫の「新創業融資精度」の自己資金要件を確認していくとともに、自己資金として認められるもの・認められないものを合計10個挙げていきます。
最後の章にはQ&Aも載せていますので、自己資金における疑問はここですべて解決していきましょう。
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創業融資の申込時に求められる「自己資金」とは
創業融資で求められる自己資金とは何なのか、どんな意味を持つのか、ここで概要を解説していきます。
ぼんやりと持つイメージをここでしっかり固めましょう。
返済不要の自己所有しているお金
誰かから借りているわけではない、完全に自己責任で好きなように動かせるお金を自己資金と呼びます。
自己資金はあればあるだけ自由に事業投資できるお金となるため、返済義務のある借入金だけに頼るよりも安全に創業できると言えます。
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返済能力や計画性の判断材料とされる
創業融資の申し込み時に自己資金の有無が確認される理由として、返済能力や計画性の判断材料になることが挙げられます。
自己資金があるということはある程度まとまった資金を持ち合わせていますので、融資を行なった際に返済に充てられる資金がすでにある、つまりは返済能力があるとの判断になります。
また、自己資金は基本的に貯金などでコツコツと準備していくものですので、創業に向けて計画的に行動できる人なんだな、と前向きな判断につながります。
関連記事:創業融資の返済は3つの準備で苦労知らずに!借入前の計画作りが重要
自己資金の出所は証明が必要
自己資金の定義として、外せないのが「出所が証明できる」お金であるということです。
どこから発生したお金なのか、なぜこの金額になったのか、預金通帳など目で見れるものでお金の動きを証明できなければ、いくらまとまった資金を持ち合わせていても自己資金として認められません。
関連記事:公庫の創業融資は自己資金の有無がカギ|審査通過しやすい3つの方法
新創業融資制度の自己資金要件をチェック
創業予定の方や創業間もない方が創業融資として一番利用しているのは、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」でしょう。
新創業融資制度は担保や保証人を用意することなく3,000万円までの融資が受けられることから誰でも申込しやすく、大変人気な制度です。
詳しい制度内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは新創業融資制度にて定められている自己資金要件について見ていきましょう。
※新創業融資制度は2024年3月31日をもって終了しました。
創業資金総額の10分の1以上
申し込み時の条件として、自己資金要件をクリアしていることが定められています。
要件には「創業資金総額の10分の1以上」と記載があり、例えば1,000万円の融資を希望する場合、100万円以上の自己資金を持ち合わせていることが申込の条件とされています。
関連記事:創業融資を無担保・無保証で実現!創業者必見の3つの条件を解説
これから創業または創業から1年以内
新創業融資制度の対象者はこれから創業予定、もしくは創業から2年以内の方ですが、自己資金要件が求められるのはこれから創業予定もしくは創業から1年以内の方ですので、2年目に突入している方は審査時に自己資金の有無を問われることはありません。
関連記事:起業2年目に大事な分かれ道!税金・資金調達はこれで決まり!
自己資金の要件を満たすものとする要件
自己資金がなければ申込すらできないのか…と思われたかもしれませんが、実は「自己資金の要件を満たすものとする要件」という、いわゆる「自己資金がなくてもこっちの要件を満たしていれば自己資金ありってことにするよ~」といった隠れ要件が存在します。
- 5年以上の勤続経験がある業種と同じ業種で事業を始める
- 大学などで修得した技能と密に関連する職種に2年以上携わり、関連性の強い業種にて事業を始める
- 特定創業支援等事業におけるセミナーなどを受講して事業を始める
- 民間金融機関と日本政策金融公庫の協調融資によって事業を始める
- 斬新な技能やノウハウを持って事業を始める
- 新商品や新役務の研究・開発・試作販売に6か月以上を必要とし、3事業年度以内に黒字化を見込んで事業を始める
- 「中小企業の会計に関する基本要領」「中小企業の会計に関する指針」のどちらかに適用予定
いずれかに該当することで、自己資金の有無を問われず新創業融資制度に申込が可能となります。
ぜひ確認しましょう。
関連記事:創業融資は自己資金なしでも大丈夫!7つの条件で自己資金要件が免除
自己資金として認められるもの・認められないもの
基本的には返済の必要がなく、出所が証明できて自身で自由に動かせるお金であれば自己資金として認められますが、なかには認められないものもあります。
認められないものを自己資金として勘違いしていては大変ですので、事前にしっかり確認しておきましょう。
【OK】銀行口座への預貯金
自身の名義の銀行口座へ、コツコツと貯めていった預貯金は立派な自己資金として認められます。
ポイントは通帳や入出金明細より、収入で得たお金を毎月貯めて積み重なった金額だと確認できる状態で貯金を行なうことです。
出所の分かるように銀行口座内で自己資金を増やしていきましょう。
関連記事:起業をスキルなし・貯金なしでも始められるビジネスモデル5選
【OK】配偶者の口座への預貯金
配偶者が本人名義の銀行口座内で行なっている預貯金に関しても、創業予定の方の自己資金として認められます。
例えば自身に妻がいて、自身の預貯金だけでは足りない場合に併せて申告することで自己資金とみなされます。
ただし、配偶者の同意なしに勝手に自己資金とすることは認められませんので、事前に配偶者の理解を得ておく必要があります。
関連記事:夫婦起業で成功しやすい職種はこれだ!自宅で簡単に始める5つの仕事
【OK】両親や親族からの贈与金
両親や親族が創業を応援してくれて、贈与金を受け取る場合は自己資金に充てることが可能です。
ただし後々返済の必要があるなど、借入の形であるなら自己資金にはなりません。
場合によっては返済不要であることの証明として贈与契約書の提出が求められるでしょう。
また、出所を証明するためにも、贈与人名義の銀行口座から受取人名義の銀行口座へ振込する形で贈与を行ない、明細を残す必要があります。
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【OK】資産売却で発生した資金
株式や有価証券、さらには不動産や車などといった保有資産を売却することで、発生した資金を自己資金にできます。
資産運用を行なった利益として評価されるのです。
申告するには、保有していたと分かる書類や売却時の契約書・領収書などを提出しましょう。
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【OK】退職金
退職金をもとに事業を始めようとする方は、自己資金としての申告が可能となります。
勤続年数が長いほど高額になりますので、自己資金とすることでさらなる資金調達の踏み台にできると知っておくとお得ですね。
急に口座へ高額が振り込まれていると一時的に準備してきたお金なのでは?と勘違いされてしまう可能性があるため、源泉徴収票などで退職金であることの証明ができるようにしておきましょう。
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【OK】第三者からの出資
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など、第三者から返済義務のない出資を受けた場合は自己資金とすることが可能です。
出資を受けたなら、第三者がなぜ出資するに至ったか、また出資を行なった履歴が確認できるような、証明となるものを用意しておく必要があります。
後から返済を求められるような出資であれば自己資金にはなりませんので注意しましょう。
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【OK】すでに事業に充てた資金
創業準備としてすでに事業のために使った資金や、事業を開始していて使った資金に関しては現在手元になくても、自己資金として認めてもらえます。
領収書など、事業に使った金額の分かる書類は必ず保管しておきましょう。
しかしいずれにせよ、返済義務のある借入金などを自己資金とはできない点に注意です。
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【NG】タンス預金
いくらコツコツと貯金していたとしても、銀行口座外で貯金してしまっては履歴や明細での証明ができず、自己資金として認めてもらうことが難しくなります。
毎月の収入から決まった金額を引き出してタンス預金を行なっていたとしても、そこから一部を生活費に使っていたなど、収支が合わなくなればタンスにある金額の説明がつかなくなってしまいます。
まだ間に合うかもしれませんので、貯金をするなら必ず、自身の名義の銀行口座内で行なうことを徹底しましょう。
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【NG】返済義務のある借入金
銀行や消費者金融、その他個人などから借入を行なった、返済義務のあるお金に関しては自己資金として認められません。
もともと自身のお金ではないため、事業のために一時的にお金を増やすことで自己資金をごまかす「見せ金」としてマイナス評価をもたらしてしまいます。
間違っても借入金は自己資金として申告しないようにしましょう。
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【NG】宝くじや競馬など偶発的なお金
宝くじや競馬、結婚式の祝い金など、特に計画していたわけでなく偶然に入ってきたお金に関しては、確かに自由に活用できるお金ではありますが自己資金として認めてもらうのは難しいでしょう。
創業のために意図的に準備したのでなく、たまたま手に入ったお金ですので、いくらまとまった金額だからといえど日本政策金融公庫など借入先から評価される可能性はほとんどないでしょう。
関連記事:資金調達の返済不要案件は使っていい?4つの安全な調達方法を知ろう
創業融資の自己資金よくあるQ&A
初めての創業融資なら、自己資金について分からないことだらけで当然だと思います。
ここではみんなが疑問を抱く、自己資金に関するよくあるQ&Aを集めてみました。
はてなを解消して万全な状態で創業融資の申込に臨みましょう。
自己資金の何倍まで借入できる?
新創業融資制度の自己資金要件に「創業資金総額の10分の1以上」とあることから、借入したい額の10分の1の自己資金を準備すればその10倍借入できるのかと思いがちですが、実際はそういうわけでもありません。
税理士さんとお話する機会があったので伺ってみたのですが、実際は自己資金の3倍ほどの融資となるケースが多いようです。
つまりは高額融資を希望すればするほど、かなりの額の自己資金を用意しておく必要があります。
10分の1を準備できたからと安心せず、“借入は3倍まで”の気持ちで準備するのがベターだと言えます。
関連記事:創業融資の追加融資は可能!1,000万円を追加借入した申込のコツ
自己資金がなくても借入できる?
新創業融資制度の「自己資金の要件を満たすものとする要件」からいずれかに該当していれば、自己資金がなくてもあるものとして申込対象者になれます。
日本政策金融公庫には他にもさまざまな創業融資制度が用意されていて、例えば「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」には特に自己資金要件の記載がありません。
事業計画やアイデアなど、自己資金以外の部分で評価されれば自己資金額は関係ないこともありますので、申込する価値はあるでしょう。
ただし、自己資金要件の記載がなかったとしてもあるに越したことはありませんので、創業後のご自身のためにもコツコツと自己資金は確保しておきたいものです。
関連記事:起業をスキルなし・貯金なしでも始められるビジネスモデル5選
自己資金が足りないときはどうする?
解決策としては次の5つがあります。
- 自己資金要件の定めのない融資制度へ申込む
- 配偶者や両親・親族などに相談する
- VCや投資家に交渉する
- 融資以外の調達手段を検討する
- 自己資金が準備できるまで創業時期をずらす
日本政策金融公庫以外にも、信用金庫独自の融資制度や、自治体が実施する制度融資など、創業融資を頼れる機関はあちこちに存在します。
自己資金がなくても、アイデアや経歴など別のところで評価してくれる機関があるかもしれませんので、一度窓口に相談してみるのが効果的です。
資金調達の手段は創業融資だけではありませんので、自己資金がないせいでどうしても融資を断られてしまうという方は関連記事をぜひ参考にしてみてください。
関連記事:資金調達は5種類!高額・スピード・返済不要の資金調達TOP3
自己資金なしで資金調達するには?
創業融資以外での資金調達を考えることができます。
- 助成金・補助金
- VCやエンジェル投資家からの出資
- クラウドファンディング
- ビジネスコンテスト
- ファクタリング
また、少し視点は異なりますが本格的な創業前に副業を始め、利益を得てコツコツと自己資金を貯めていく、といった方法もあります。
すでに創業している場合は、ファクタリングや銀行保証付私募債、手形貸付などが活用できますので検討してみてください。
関連記事:資金調達の返済不要案件は使っていい?4つの安全な調達方法を知ろう
自己資金の平均額は?
日本政策金融公庫が毎年度にわたって公表している「新規開業実態調査」を参考にすると、創業資金総額のうち、自己資金額の割合は平均で5分の1程度となっています。
創業資金総額が1,000万円なら、自己資金は200万円ほど準備している計算になりますね。
あくまでも平均額であり、創業に携わる税理士いわく「自己資金額の3倍ほどの融資実行ケースが多い」とのことですので、平均より多めに見積もって準備しておいたほうが審査通過率はアップするでしょう。
関連記事:創業融資はいくらが妥当?自己資金の3倍が目安!3つの決め方を紹介
自己資金は誰に相談すればよい?
「自己資金の準備方法が分からない」「自己資金がないけど創業タイミングを逃したくない」など、自己資金に関する悩みは1人で解決できないものも多いでしょう。
そんなときに頼りにしていただきたいのが、【CEOパートナー】という創業融資のコンサルサービスです。
CEOパートナーではプロの税理士と即日マッチングが叶い、数々の相談者の融資実行を支えてきた経験をもとに、一人ひとりの状況に合わせて適切な資金調達方法のアドバイス、申込サポートが行なわれます。
創業に関する幅広い知識を持つ税理士と密に連携したサービスですので、お悩みの方はぜひ一度気軽に問い合わせてみてください。
関連記事:創業融資の相談はCEOパートナー!実績のある相談所3選
まとめ
創業融資の自己資金は適切に準備して融資申請に臨む必要があります。
自己資金がなくても融資を受け取れる可能性や、他の資金調達方法などもありますが、審査に通過することだけなく創業後のことを考えても、資金繰りに苦労しないためにはある程度まとまった自己資金を準備しておきたいものです。
自己資金の準備方法は何も貯金に限られたことではありませんので、さまざまな方法を検討して準備を進めていきましょう。
創業融資の自己資金についてはもちろん、創業に関して一人では解決できないお悩みがあれば、抱え込まずに気軽にCEOパートナーを頼ってみてくださいね。
自己資金の有無に惑わされず、せっかくの創業を成功させましょう。
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